日本経団連
米倉弘昌会長殿


平成24年3月16日
地球システム・倫理学会常任理事
村田光平
(元駐スイス大使)
拝啓

 時下益々ご清栄のこととお慶び申し上げます。

 このほど発出された日本地球システム・倫理学会の緊急アピールをお届けいたします。人間社会が受容できない原発のもたらしうる惨禍のリスクはゼロにすべきであるとの訴えにご賛同いただけるものと確信いたします。福島事故はこの忘れられた大原則を想起させました。この事故の罪深さの認識と反省の不足は倫理の欠如との謗りを免れません。

 ご高承の通り六ヶ所再処理工場、フクシマ4号機の燃料プール,高速増殖炉もんじゅなどは緊急な対応を必要としております。余震の規模如何では4号機燃料 プールが崩壊して1535本もの燃料棒が大気中で燃えるという人類未経験の恐ろしい事態がいつでも発生し得るのです。そうなれば世界の究極の破局の始まり です。危機感の欠如が嘆かれます。特に余震が脅かす4号機対策としての燃料棒取り出し作業の開始が年末以降とは到底理解できません。最優先課題の筈です。 国の責任は重大です。

  1980年フランスのラアーグ再処理工場で発生した「シェルブールの停電事件」 はドイツのケルン原子炉安全研究所の極秘レポートによれば一万キロ範囲内の全ての住民の死亡をもたらし欧州を全滅しうるものでした。同様に危険な六ヶ所再 処理工場の即時閉鎖は最大の緊急課題の筈です。無限大はゼロ以外の如何なる数字を掛け算しても無限大です。リスクはゼロにすべきです。これが福島の教訓だ と信じます。

 危うく回避された東電の事故現場からの全面撤退といい、3・11の際の六ヶ所再処理工場の外部電源喪失、4月7日の余震による再度の電源遮断といい、現 実に存在する究極破局の可能性への無関心はもう放置してはならないと思います。再処理重大事故は原子力安全機構の2007年三月報告書によれば「臨界事 故」が18件、「火災事故」が45件、「爆発事故」が32件も発生しているのです。

 このほど潘基文国連事務総長からの書簡が寄せられましたのでお届けいたします。国連倫理サミットにつき加盟国が国連総会に持ち込めば喜んで支持するとの意図表明があり喜んでおります。今年9月の総会に向けてオバマ大統領がイニシャティヴを取るようルース駐日米大使に働きかけております。

 来る3月22日、午後1時から4時までの参議院予算委員会の公聴会で「みんなの党」推薦の参考人として陳述を行う予定です。別添の事故一周年 所感を盛り込む所存ですが、4号機燃料プールへの緊急対応を特に訴える所存です。目に余る危機感の欠如は放置できません。世界の命運がかかる最優先課題の 筈です。

 日々発生する余震に国民一同がおびえ出している中で、フクシマが想起したリスク0の大原則(人間社会が耐え難い惨禍をもたらす可能性は0にする)は世界 中で再認識され出すと信じます。一昨日、世界的に著名なドイツのvon Weisaecker教授より六ヶ所再処理工場の閉鎖を正式に支持するとの連絡が入りました。

 フクシマの教訓の一つに新しい文明への転換の必然性があります。別添の長谷川私案の長期夏季休暇の導入など日本経団連におかれても具体論を論議されるようお願い申し上げます。

 同封の毎日記事の通り福島事故の教訓を世界に知らせる発信を続ける所存です。どうかよろしくご指導、ご支援の程お願い申し上げます。

 貴会長の一層のご発展とご自愛をお祈り申し上げます。
敬具



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