東京電力株式会社
下河邉和彦 取締役会長殿


平成24年9月3日
村田光平
拝啓
 時下益々ご清栄のこととお慶び申し上げます。
 1999年駐スイス大使を退職以来、原発推進の国策を改めるよう訴えてまいりました村田です。緊急にお知らせしたいことがあり、まことに失礼とは存じますが本メッセージを差し上げる次第です。

 去る8月31日に、4号機問題を考える議員と市民の院内集会が開催されましたが、驚くべきことが判明しましたのでご報告いたします。あきれ果て、放置できない案件で、すでに大ごとになりつつあります。

 同集会第一部はご存知のアーニー・ガンダーセンさんの講演と特別スピーカーとしての私のコメントでした。第2部は経産省よリエネ庁の課長、東電より課長 クラス7名に対するヒヤリングが行われました。東電に対しては飛散防止剤の影響、鉄筋の腐食、燃料棒取り出しの計画などについて、 そして保安院には事故処理のため企業任せを改め国が前面に出て迅速に対応する必要性、国際技術協力チームの必要性などにつきあらかじめ質問書を提出してあ りました。

 第一部でガンダーセンさんは(1)最悪の事態が発生し燃料棒集合体が大気中で発火することが米国の研究所で確認されている(2)消火に水を使用すること は水素爆発を起こす危険があるので許されない(3)水に代わり消火に効果があるとされる化学製品が存在する旨指摘しました。
 第2部で同氏より、東電は最悪の事態に備えてこのような化学製品の活用を考えているか質問しました。これに対して東電側からは繰り返し、4号機は十分補 強しているので崩壊はあり得ない、消防体制も強化していると応答し、水の使用が問題外であることを理解していないことをさらけ出しました。
 これに対し数名から、最悪の事態を想定しないのはおかしいのではないかと叱声があり、エネ庁課長に持ち帰り検討するようを求めたのに対し、回答を避ける対応振りでした。

 4号機問題という世界の注目を集めつつある重大問題に対し、事故後1年半も経って国と東電の実務責任者の理解の実態がこのようなレベルのものであったことが露呈しました。ついにあきれ果てた場内は罵声、怒号に満ちて騒然となりました。
 ガンダーセンさんからは第一部で、4号機の未使用の202体の燃料棒集合体及びすでに放射線の低くなっている600体を合わせて1533体の3分の2は 今からでも取り出せる旨、そしてその作業が終わる1年半ぐらい後には残りの取り出しが可能となる旨の指摘がありました。これを踏まえて、私より第2部でこ の点東電に質問しましたが、燃料棒取り出しが如何に急を要するものであることについての認識に全く欠ける回答振りでしたので、私から強く苦情を伝えまし た。

 現状は深刻です。マスコミは必ずこれを全国に伝えることになると思われます。
 既に反響が接しております。
 世界が注目する4号機という安全保障問題を含む福島事故処理は、国が全責任を担って最大限の対応をする必要性が否定しがたいものとなりました.また、かねてからの懸案の中立評価チーム及び国際技術協力チームの必要性もこれで完全に明白になりました。
 この意見が無視されないことを祈るのみです。

 貴会長の格段のご尽力をお願い申し上げます。
敬具



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