野田佳彦内閣総理大臣殿

平成23年9月15日
村田光平
(元駐スイス大使)

拝啓
時下益々ご清栄のこととお慶び申し上げます。
初めてお手紙を差し上げる失礼をどうかお許し願います。

1999年に外務省を引退後、拙著「原子力と日本病」を発行するなど、原子力政策の転換を訴えてまいりました。福島事故発生後は民亊、軍事を問わない核廃 絶を世界に訴えていくことが日本の責務であるとの考えを内外に発信しております。また、その前提としての国連倫理サミットの開催及び母性文化に立脚した和 の文明の創設を訴えております。

一昨日、テレビで東電による黒塗り資料の国会提出事件に衝撃を受け、筆を取らせていただきました。この事件(あえてそう呼びます)は泊原発の再稼動同様に 福島事故を起こした罪深い電力会社が責任の自覚も反省もなく、報じられているように「巻き返し」を図っていること(月刊「選択」9月号)の証左と言えるも のです。ご賢察の通り世論が許す筈がありません。今後の世論のマグマの高まりは容易に予見できます。

7年前に各党党首宛に発信した同封の「日本の命運を左右する電力会社」と題する小文は「原子力村」(原子力独裁)により黙殺されましたが、今こそ世論の支 持を得てこの独裁を終わらせねばならないと信じます。2004年に始められた浜岡原発の運転停止を求める全国署名は、近日中に100万筆に達し、反響を呼 ぶ見通しですが、このような世論を無視して津波対策のみで運転再開を目指し、しかも、これが可能と考える電力会社の実態は「独裁」としか言いようがありま せん。

インターネットや一部雑誌は福島原発の再臨界発生の可能性、「放射線汚染瓦礫処理法」の重大欠陥などを伝えており、福島の現状の深刻さとマスコミが伝える 現状との大きな格差を感じさせております。福島事故は対応を誤れば世界の究極の破局の第一歩になりかねないと憂慮しております。その意味で日本のみなら ず、「世界の命運を左右する電力会社」とならないよう「原子力独裁」に終止符を打つことが急がれます。


現在、そのために緊急に必要とされるのは、もはや誰もが認めざるをえない「原発推進は国策」ではなくなったということを政府が確認し表明することだと思われます。原発推進の体制の抜本的見直しが求められております。

直面する原発危機の真相を世界に伝え、究極の破局を未然に防ぐために人類の叡智を総動員することが求められていると信ずる次第です。

これからの世界に必要とされる日本の母性文化の和の精神を体現されておられる貴総理の一層のご活躍とご自愛を心からお祈り申し上げます。

敬具

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