中川雅治環境大臣殿
平成29年8月21日
村田光平
(元駐スイス大使)
残暑お見舞い申し上げます。
 
 このたびの環境大臣ご就任を心からお祝い申し上げます。
 麻布学園31年卒の元駐スイス大使の村田です。
 長年にわたり脱原発、そして力の父性文明から和の母性文明への転換を訴えて参りましたが、日本の現状は、漸く新たな時代の到来を予感させるに至っており ます。特に、すべての人の道に反することは露見するという天地の摂理(歴史の法則。老子の天網)が実感される昨今です。ハーヴァード大学で最近、老子研究 が人気があると言われるのも肯けます。
 不道徳な原子力の全方位の破壊力に世界が目覚めつつあリます。皮肉にも日本は福島事故と東芝の経営危機により意図せず脱原発の促進に大きく貢献し出しております。

 五輪返上への世論の動きが実感されだしております。大手メディアは最近五輪のあり方を根本的に問いただす読者の声を取り上げだしました。
 開催国の新しい選定方式、特定の競技の特定国による持ちまわり開催等々興味深い提言が散見されます。
 五輪のスポンサーである毎日及び朝日までも五輪批判を強めつつあります。
「人の命や健康を犠牲にして行われる五輪など、矛盾以外の何物でもない」(8月14日付朝日社説)
「東京五輪は安倍晋三首相が「福島の汚染水はアンダーコントロール」と全世界にウソをついて招致した。安倍内閣は「東京五輪のため」という美名の下で、人 権を制限する「共謀罪」法を無理やり成立させた。東京五輪を口実に、民主主義が壊されようとしている。   少なくとも、我々は“東京五輪病”を返上すべきだ!」(8月7日付毎日夕刊)

 各方面からの要請を受けながら福島事故への対応の現状の把握を軽視する国際オリンピック委員会(IOC)の責任は誠に重大です。今秋のIOC理事会で変 則的に2024年パリ及び2028年ロサンゼレスが決定される予定と伝えられますが、オリンピックの新しいあり方についての議論が尽くされることがその前 提として不可欠と考えます。IOCはリスク回避のために、初めての開催地が登場することによるオリンピック・ムーブメントの拡散よりも、大都市の開催によ る商業主義を優先したとの批判に耳を傾け、これに答えることが求められております。

 8月12日のTBSラジオで、五輪返上を訴え続ける久米宏氏は五輪組織委員会からの反論を取り上げ、IOCによる酷暑下の時期設定(!)を受け入れて立 候補した東京五輪の「アスリートファースト」は全くの嘘であり、それは「五輪ファースト」であることを「語るに落ちた」と断じております。

 東京五輪の新国立競技場建設に使う木材に関して、安価調達のためペナンやマレーシアの先住民の権利侵害してまで伐採されるとして、ドイツやスイスの日本大使館に14万人もの非難署名が寄せられたことに対しては真摯に対応することが望まれます。

 福島原発事故の教訓を何ら学ぶこと無く、再稼働を進め、太平洋の放射能汚染を放置する日本の現状に対する海外の批判は、ご高承の通り強まる一方です。
 最近の地震の頻発に接し、巨大地震に伴う福島第一2号機建屋の崩壊による原発大惨事の再発の懸念は深まる一方です。
 全世界が求める福島事故収束への全力投球を可能にするためという大義名分の五輪返上の決定が急がれる所以です。

 この決定がもたらす計り知れない影響に鑑みれば、五輪問題がいよいよ政治問題化することは必至と思われます。

 貴大臣の一層のご指導とご尽力をお願い申し上げます。
敬具


追伸 関連記事を別添お届け致します。



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