石破 茂先生
平成28年9月22日
村田光平
(元駐スイス大使)
拝啓
 初めてFAX信を差し上げる失礼をお許し願います。
 福島原発事故の教訓(経済重視から生命重視への転換)を活かすため発信を続けている元スイス大使の村田です。民事、軍事を問わない核廃絶への貢献が日本の歴史的使命であると訴えております。

 数日前先生のテレビ会見を拝聴し、日本の将来、政権ではなく国家の将来を真剣に考えておられることに感銘を覚えました。最近の内外の情勢に関する所感を お届けして危機的現状についての認識を共有させて頂ければと願う次第です。先生のように長期的視点に立って日本の将来のために尽力する人材が力を合わせる 体制が、政界に生まれることが切望されます。国民は必ずやこれを支持するものと思われます。

 440余基の原発の存在を容認することは、最大の安全保障問題と言えます。最近、このような世界の主流が変わることを求める声が高まりつつあります。こうした変化が始まる兆候は確実に増えてきています。

 その事例として最近のNHKの7名の解説委員による原子力政策批判、小泉元総理の外国特派員協会における“under control”発言の否定と批判、小池新都知事による豊洲問題や五輪絡みの過大な予算要求の背景調査など諸改革への意欲的取り組みを挙げることが出来ま す。豊洲新市場問題の真因がテレビ報道で指摘されました。移転先の選択にあたり、条件としてなんと肝心の「安全」が抜けていたということです。人は罪する ことで罰せられると言われれますが、因果応報の感ありです。当然仕切り直しが求められます。

 漸く動き出した「もんじゅ」の廃炉は、特筆に値する変化の兆候です。これが恐るべき禍根(原発1000基分の事故)である再処理工場の閉鎖にまでつながることが何としても求められます。

 傑出した有力な科学者から次のメッセージが寄せられました。
『もんじゅは完全に理解不可能です。文科省(元科技庁でしょうが)と利権にすがるのはだれか?だけなのですから。「下品」なのです。』

 内外の反対を押し切って実施された再稼働は、「日本の基準は世界一」という嘘、また東京五輪は「under control」という誰も信じない嘘に立脚しております。小泉元総理は9月7日の外国特派員協会記者会見でこの旨発言され、これが世界的規模で報じられ ております。東京五輪は国際社会からは日本が福島事故処理に全力投球していないことの傍証として受け止められております。

 東京五輪の安全性の再確認を求める市民社会からの申し入れに応じようとしない国際オリンピック委員会(ICO)に対して、「under control」発言に関するIOCとしての認識を問う動きが本格化する兆候に接しております。この動きは日本の五輪関係者に対しても向けられることが予 見されます。

 福島第一では原子力非常事態宣言が解除されておらず、600トンの燃料棒のデブリが行方不明であり、廃炉の見通しも立てられない状況が続いております。

 東京五輪準備がもたらす各方面への被害は時間の経過に比例して増大するという深刻な問題となりました。一日も早いその返上決定が待たれます。

 ご理解とご支援をお願い申し上げます。
敬具




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