3.11を「地球倫理の日」にしよう
 地球システム・倫理学会
                                会長 服部英二
 
 フクシマは、原発事故が人類と地球に許容できない惨禍をもたらすものであることを全世界に思い知らせました。しかし、文明の破局の第一歩となる可能性を秘めたこの事故を教訓として新しい未来を開こうとしていない世界の現状を、われわれは深く憂慮します。
 
 その第一の教訓は、もはや何人も責任を取れないほどの巨大な被害をもたらしうる科学技術は、事故の確率的数値がどうであれ、そのリスクが完全に0でなけ れば決して使用することが許されるべきではない、ということです。第二の教訓は、未だ最終的処理方法が発見されていない核廃棄物に象徴される現存世代の倫 理の欠如こそが、人類の認識すべき緊急の課題であることです。
  放射能汚染を許すあらゆる行為は、計り知れない害悪を半永久的に人類と地球に残すものであり、1997年のユネスコ総会において、現存世代 には未来世代が享受すべき美しい地球を残す責任があると、全世界が一致して採択した「未来世代に対する現存世代の責任宣言」に対する背信行為であると知る べきです。
 
 日本はついに民事・軍事の双方で原子力の犠牲国となり、世界的規模の放射能汚染の被害国であると同時に加害国になりました。
 日本は永年、国連の場において非人道的な核兵器の廃絶を訴え続け、それは今、欧米を含めた絶対多数の声となりました。しかしこの核兵器の遺児である核燃 料による発電は、原子力の平和利用の美名と市場原理主義の掲げる効率の名のもとに、未だ世界に拡散しつつあります。今、日本国民は、自らが体験した悲劇 の、他国・他地域での再発を防ぐためにも、民事・軍事を問わない真の核廃絶を世界に訴える歴史的責務を担っていると信じます。
 
 3.11の直後の4月11日、本学会は複数言語による「緊急アピール」を世界に発信し、今起こっていることは文明の危機であること、「力の文明」から 「いのちの文明」への転換を図ること、「いのち」の継承を至上の価値とする「母性原理」を再評価することを説き、更にその根底には倫理の問題があると指摘 し、世界が脱原発に舵をきることを訴えました。
  地球倫理の確立なしに次世代に美しい地球を残す未来の人類文明はあり得ません。幸い、本学会がこの緊急アピールで訴えた「国連倫理サミッ ト」の開催と「地球倫理国際日」の創設に対しては、世界の多数のオピニオン・リーダーより強く支持する旨のメッセージが寄せられています。
  われわれは今日、国際社会が3月11日を「地球倫理の日」と定め、世界のすべての人びとが地球と文明の未来を考える反省の日とすることを提唱します。



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