安倍晋三内閣総理大臣殿
2019年8月26日
村田光平
(元駐スイス大使)
拝啓
 倒壊すれば東京も住めなくなる福島第一の排気筒対策は、なんと3度目の工事延期となりました。東京五輪準備に劣らず重要なこの事案の重要性および緊急性 が政府、原子力規制委員会、東電、その他、政財界、マスコミなどによって十分理解されていないことが嘆かれます。現状を放置できません。
今後、福島第一を襲う台風、地震、津波、竜巻などに日本の命運が左右されかねないのが現状です。全力投球の対応が求められる福島危機についての認識不足は深刻な問題です。
 
 他方、文藝春秋9月号に掲載された元東電職員の木村論文は既に内外で反響を呼んでおりますが、同論文で最も注目されるのは下記の指摘と思われます。
 <東電は津波によってメルトダウンが起きたとの主張を繰り返しております。そして、その「津波」は想定外の規模で、原子力損害賠償の免責条件 にあたるとしています。しかし「津波が想定外の規模だったか」以前に津波ではなく「地震動」で燃料破損していた可能性が極めて高いのです。
  しかも、私が分析したように、「自然循環」停止の原因が、ジェットポンプ計測配管のような「極小配管の破損」にあったとすれば、耐震対策は 想像を絶するものとなります。細い配管のすべてを解析して耐震対策を施す必要があり、膨大なコストがかかるからです。おそらく費用面から見て、現実的に は、原発はいっさい稼働できなくなるでしょう。>
 
 これに関連し、福島第一原発事故の国会事故調査委員会の委員を務めた元原子炉設計技術者の田中三彦氏は、かねてより1号機の電源喪失は津波が 到達する前だったとする独自の見解を発表しております。 同氏は、原発沖にある波高計のデータや作業員が撮影した写真を基に、1号機に津波が到達したのは2011年3月11日午後3時39分ごろと推定しておりま す。東電が公表したデータによると、非常用ディーゼル発電機は津波到着以前の同37分に停止しているため、1号機の電源喪失は津波以外の原因だと主張して おります。

貴総理のご理解とご支援をお願い申し上げます。
敬具




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