3月28日に開催された地球システム・倫理学会理事会での発言要旨

1  福島原発事故と日本の責務
 福島原発事故の元で、原子炉爆発という破局の恐怖におののく日本国民が原発に対しどのような気持を抱いているかを内外に伝えることは日本の責務と考える。
 3月21日、ルース駐日米大使宛に、二度と今回の日本の悲劇が繰り返されないようにするため、平和利用を含む核廃絶の理念を打ち出す国連倫理サミットの 開催を訴えるメッセージを発出し、オバマ大統領への伝言を要請しました。潘基文国連事務総長およびフォーレ駐日仏大使にも同趣旨のメッセージを22日発出 した。

 2007年7月の新潟中越沖地震直後に行われた外国人記者クラブで原子力の問題は倫理と責任の問題に集約される旨、また、我々は二つの選択の前に立たさ れており、一つ目は予防措置として地球の非核化を開始すること、二つ目は破局的な災害の発生により、一つ目の選択に追いやられることである旨述べたことが 改めて注目されており、スイスではテレビ、知人の講演などで引用されている。
 旧ソ連のように事故処理に80万人あまりの要員を強制的に動員しうる体制もなく、スウェーデンのように法律で16歳以上の国民の事故処理の義務を定めて いない日本で、今、東海大地震が発生し浜岡原発がチェルノブイリ事故のような核分裂暴走事故となれば日本はお終いである。
 3月18日には、菅総理と清水中部電力社長に秘書を通じ、早急に90万以上の反対署名の集った浜岡原発の運転停止を実現するよう申し入れ、23日には、 海江田経産大臣、江田法務大臣,与謝野経済財政大臣および川勝静岡県知事に対しても、秘書を通じ同様の申し入れを行った。反対署名を100万台に早急に到 達させる運動が26日始められ、各方面より支持の申し出が激増している。
 日本はついに原子力の軍事、平和双方の利用の唯一の犠牲国となった。
 民事、軍事を問わない核廃絶を世界に発信してゆく責務を負うに至ったといえる。これこそ今回の不幸を無駄にしないために考えうる唯一の世界への貢献であ る。「核兵器も原発もない世界」のヴィジョンの国際的確立を目指して、その具体的第一歩としての国連倫理サミットの開催実現に向けて、日本が一日も早く呼 びかけてゆくことが切に望まれる。

2 国際シンポジウム(6月25日)のパネリスト事前配布資料について
 英文、A44ページのこの資料は日本・スイス間政治協議の議題に国連倫利サミットを取り上げることを進言したいとしてBucher 駐日スイス大使の依頼を受け作成したものである。その骨子は次の通り。
(1)文明の危機
  世界が直面する危機は経済危機でも金融危機でもなく文明の危機であり、その解決には人類の叡智の地球規模の動員が必要とされる。
(2)倫理の欠如
 三本柱は未来の世代にツケをまわす資源の濫用、有毒廃棄物及び膨大な債務である。これは倫理観、責任感および正義感の三カン欠如に由来する。
 拙著「原子力と日本病」(2002年、朝日新聞社)の中で日本病、世界病と称した。
(3)新しい文明の定義
 拙著「新しい文明を提唱する」の中で(2001年、文芸社)で次の定義を記した。「倫理と連帯に基き、環境と未来の世代の利益を尊重する文明」
(4)オバマ大統領と母性文化の世界的潮流
 破局に人類を向かわせる父性文化に基く「力の父性文明」から、命の継承を至上価値とする母性文化に基づく「和の母性文明」への転換に人類と地球を守る方向で働く天の摂理が看取される。母性文化の世界的潮流を生んだオバマ大統領には歴史的役割が認められる。
(5)紛争解決に不可欠な母性思考
 父性文化・母性文化の切り口のメリットは、母性文化の普遍性により宗教対立なり文明対立を回避できることが、3年余の発信を通じ確認された。父性思考から母性思考への移行は可能であり、紛争解決には母性思考が不可欠である。
(6)世界平和、核廃絶、母性文明、国連倫理サミットの関係
・倫理なくして核廃絶は実現できず、核廃絶の実現には母性文明への転換が前提となる
・ 国連倫理サミットは母性文明への転換及び核廃絶へ向かっての具体的第一歩である。Roos駐日米大使は同サミット開催実現の努力に謝意を表明した。
・元スイス大統領のDeiss国連総会議長のモラルサポート、核戦争防止国際医師会議[IPPNW]スイス支部の支援およびBucher駐日スイス大使の協力ぶりには「小さな外交大国」スイスの面目躍如がみられる。
・ 日本イニシャチヴへ向けて外務省は国連代表部との協議を進めているが、 本格的に動き出すには内外の強力な後押しが必要とされる。

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