全国知事会
山田啓二会長 殿


平成24年1月19日
地球システム・倫理学会 常任理事
村田光平
(元駐スイス大使)

拝啓

 時下益々ご清栄のこととお慶び申し上げます。
 昨年6月29日付お手紙を差し上げた村田です。

 福島事故から教訓を学ぶべき日本、そして世界は逆方向に進もうとしております。批判を招いている「収束宣言」に見られる事故の影響の極小化を図る政治的 思惑は露見するに至っております。このたびの原発寿命40年法制化もその延長線上にあり、即時脱原発を抑えるための暴走の感があります。

 原発の運転再開問題は、世間にさらけ出された原子力政策とその実施体制の重大な欠陥についての反省と責任の自覚が不十分のまま政府から地方自治体に要請 が行われております。丸投げ、丸写しの実態が判明した安全審査に立脚する原発の安全は保証される状況には全くないことは明白です。

 他方「結果責任を問わない原子力村」に関して、福島原発事故の発生をもたらしたことの罪深さの認識と反省不足にたいする批判は益々高まりつつあります。 犠牲者の計り知れない不幸な立場を思いやる想像力不足と倫理の欠如に起因すると思われます。ついに南相馬市の元高校の教師の急性被曝症状による衝撃的な異 変が伝えられるようになりました。(http://blogs.yahoo.co.jp/kmasa924/28532025.html
 元旦の大きな地震のためか、放射線量の増大が伝えられております。(武田邦彦氏ブログ「緊急速報 急なセシウムの増加はどのぐらい危険か?」)
http://takedanet.com/2012/01/post_d320.html

  最近世間を騒がした東電による黒塗り資料事件は地震原因説を立証させないためであったことが判明しております。地震原因説が確立すれば再稼 動は実質上不可能になるからです。2002年より9年をかけて浜岡原発の運転停止を求める全国署名は昨年11月に100万筆に到達しましたが、このことが 運転再開を目指す関係者により依然無視されていることに驚くのみです。電力会社とメーカーに「丸投げ」している実態が知れ渡っている定期安全審査なり、ス トレステストなりを国民に信頼するよう求めることと相通ずるものがあります。日本国民のレベルは決して素直にこれに従うほど低くはないと確信します。

 7年前に「日本の命運を左右する電力会社」と題する警告のメッセージを各政党党首を始め各方面に発出しました。その通りとなりました。

 今や、福島事故を他地域、他国で発生させないようにするのが日本の歴史的責務であるとの考えから別添の「日本の、そして世界の命運を左右する再稼動問 題」と題するメッセージを内外に発出しております。再稼動問題は経済重視と生命重視のせめぎあいの天王山となっているのです。断じて認めるべきではありま せん。

 事故当初、東電は現場からの撤退の許可を政府に求めてきましたが、もしこれが認められていれば、日本のみならず世界の究極の破局に発展しうる大惨事に なった筈です。福島原発事故から得られたこのような歴史的教訓を全世界に知らせることは日本の責務であると信じます。人間社会が耐え難い惨禍を蒙る可能性 はゼロにすべきであるという忘れられた大原則を福島事故は世界に想起させねばならないのです。既に潘基文国連事務総長、カーター元米大統領, アル・ゴア 元米副大統領などの要人にこの趣旨の書簡を発出しております。

 以上の立場より別添資料「原発再稼動に反対する」の通り再稼動の阻止、脱原発政策の確立および核廃絶への日米協力を貴知事を始め、全国の知事の皆様に心から訴える次第です。

 どうかご指導とご支援を賜りますようお願い申し上げます。
 貴知事の一層のご活躍とご自愛をお祈り申し上げます。

敬具           



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