福島でのオリンピック競技は安全か?
「現地を訪れて分かった、原発事故の重大な影響は終わっていない」
D. ズィリン J.ボイコフ
米国誌「The Nation」 2019年7月25日より以下翻訳転載
https://www.thenation.com/article/is-fukushima-safe-for-the-olympic-games/
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2020年のオリンピック聖火リレー(のルートの一つ)は、福島を起点としています。福島は、多くの人が知るところ、国際的なスポーツの地というよりは 2011年の大地震、津波、原子炉事故の地です。福島で聖火リレーを行うという計画は意図的なものです。すなわち、福島は訪問しても安全な場所として復興 を印象づけ、また、居住しても、仕事をしても安全な場所であるとして復興を印象づけるためのものです。福島は、オリンピック組織委員会がオリンピックの野 球とソフトボールの正式な競技場として選定した場所です。そこは炉心が溶融した原子炉から88キロしか離れていません。それらの競技は「復興五輪」のメッ セージを打つためのものです。
しかし、私たちが福島を訪れてみて分かったことですが、オリンピック組織委員会がやろうとしていることは、良くて「疑問」です。そのすべての設定が日本の 「脱・真実」政策をまかり通そうとするものです。福島はまだ安全でありません。オリンピックの有力者や政治家がたとえどんなに調子のよい口先を並べようと も、福島が安全であるというわけにいきません。
私たちは、世界中のジャーナリスト、映画製作者、活動家でいっぱいのバスで福島に行ってみました。 同行者は藤田康元教授(産総研)でした。放射線量を記録する線量計をもっていました。福島が近づくより前の 2時間の記録では、線量計は 0.04 μSv/hを示していました。藤田教授は、もし 0.23 μSv/h(年 2ミリシーベルト)を超えると危ないと言っていました。我われのバスが第一原子力発電所と除染現場に近づくにつれて線量計の針は高い値を示しました。東京 電力の廃炉資料館の外では 0.46μSv/hと危険な値でした。その後、炉心溶融した 3基のうちの一つである 1号機に近づくと、真に驚くべき数値 3.77 μSv/hにはね上がりました。現在のところ、オリンピックの聖火リレーはこれらの高汚染地帯を通る予定です。
私たちが福島に入ったとき、黒いフレコンバッグが見え始めました。それらは、多くの作業員が遠方から福島に仕事にやって来て、汚染された表土を削り取った ものが詰められているものです。これらの何千ものバッグは、地元では「黒いピラミッド」と呼ばれており、高く積み上げられていますが、そこで働いている作 業員は防護服を着ていません。積み上げられた袋からは植物が突き出ているものがあります。その植物が突き出ている光景は希望のしるしにも見えますが、他の 人びとにとっては危険のしるしであり、風が吹けばその中の高度に汚染された土は飛ばされて、それによって街の放射能の少ない場所も汚染されてしまいます。
私たちの中には、2013年に安倍晋三首相が IOC委員の懸念をかわすために「アンダーコントロール」と言ったのを信じている人はいません。福島県の医療ジャーナリスト藍原寛子さんは我われに「政府 は真実をよそにプロパガンダのほうを先行させました。国民は(プロパガンダを歓迎して喝采する人びとと、真実を知って深刻に憂慮する人びととに)二分され ています。そのような中で、ここに住む人々にとっては、危機と、除染と、そして汚染が進行しています」と言います。
福島が科学的に安全であるかどうかは現在大きな議論となっています。日本政府の旅行ガイドでは、福島県のわずか3パーセントが安全でないとされています。 しかし、「サイエンティフィック・アメリカン」誌は「事故から 2か月後に、日本政府は緊急事態への対応を急いで、許容限度を国際基準である年間 1 mSv から20 mSv に引き上げた。避難者は、安倍首相が福島第一原発事故を国民から隠すという決断をしたことによって公衆衛生は危険にさらされており、特に放射線の影響を受 けやすい子どもたちが危険にさらされている」と述べています。
我われは、また、木幡(こわた)ますみさんとも話をしました。彼女は優れた人であり、大熊町の12名の町会議員で唯一の女性議員です。彼女は、また、町会 議員の中で唯ひとり原子力発電の危険性について発言している人です。彼女は、安倍首相が「アンダーコントロール」と言ったとき、福島に住んでいました。彼 女は「アンダーコントロールなどでは絶対にありません。何も終わっていません。放射線はまだ高線量です。除染されたのはほんの一部です。避難区域はまだ広 大です。ここはまだ高線量です。そうであるのに、日本はオリンピックを開催しようとしています」と言っています。
「復興五輪」を印象付けようとすることに対して、福島の街並みにもそれが真実でないことが見受けられます。多くの人びとがまだ避難していて県外に住んでい ます。正確な人数は把握していませんが、数万人です。その数字が幾らであれ、福島県の中で炉心溶融した原発のまわりの区域に人びとがいないことは現在起き ている事実です。震災で残った建物の数も不足しており、福島の景観を古びたものにしています。地震と津波、炉心溶融によって破壊された建物は再建されてい ません。「経営者に見捨て」られた事業体も多くあり、これがすべてを物語るでしょう。家庭も仕事も「空」であり、ソニー、三菱、本田といった日本の企業文 化の巨人たちの崩壊の兆しがあります。
この荒涼たる光景にもかかわらず、木幡ますみさんは何とかして戦う気力をもち続けています。彼女は「地元の人びとが私のところにやって来て、ここで本当に 起こっていることを世界に伝えてくれと言います。それが私を支えています。病気になる人がいます。ストレスで死にかけている人がいます。 世界はこの真実を知ってください」と言いました。

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この「The Nation」の記事は、村田光平・元スイス大使がご紹介くださったものです。筆者(D. ズィリンと J. ボイコフ)の写真は私が改めて添付したものです。
なお、「The Nation」は、1865年(日本の幕末)にアメリカで創刊され、アメリカで最も古い伝統と信用をもつ雑誌の一つです。日本では、徳冨蘇峰(1863-1957)が1887年(明治二十年)、24歳のときこの「The Nation」にならって
「国民の友」(添付図)を刊行しました。
 


(ここまで)
 

【以下、コメント】
 
・朝比奈隆司  私は2014年と2016年の二度1F周辺に行きました。2016年の時も国道6号走行中の線量が上がったり下がったり。国道から少し入った富岡町民家 脇の道路は線量が低かったのですが、そのお宅の事故以前からあると思われる垣根の根元では跳ね上がりました。これではとても住める状況では無いと思いまし た。除染されたのはほんの一部だけですね。山林などは手つかずの状況だと思います。東電や政府は、雨風で流されるのを待っているのでしょうかね。
・Nathaniel Takao Cook  有難う御座いました。我々の社会にとって、真実がどれ程に貴重なのか、再度認識します。
・日下正彦  レポートシェアさせていただきます。物理的にも人道的にも間違った開催と思います。
・大内博  福島とオリンピックに関心がある方全員に読んでいただきたい情報を示していただきありがとうございます。
・小田島広江  福島は行くな。といえない空気があるのが現実。福島だけでなく東京にも該当するのではないか? せめて海での競技は止めて別の競技会場を設定して欲しい。という
か、何で誘致した?
・小坂田洋介  世界的嘘つきですね。
・大東勲  福島は終わってないのです! 詳細な検証をしなければなりません! 日本を騙しても、世界を騙すのは無理です! 利益を伴わない、イーブンな立場での判断は間違いがありませ
ん!
・難波千代子  日本全体がこの真実を知って、真正面から向き合わなければなりません。
・大槻達雄  首都圏の土壌汚染深刻 35地点でチェルノブイリと同レベル。
・寿子平田  彼ら7月21日に来日。反五輪の会と合流し各会場でオリンピックについて講演会を開催。私は知人を通して彼らと21日会いました。
・大槻達雄  そろそろ知るべき東京オリンピックが抱える不都合な真実。
・磯部弘二  日本人は井の中の蛙。どころか、知っているのに、それを公表しない!
正しい行動をしない! 正しい判断をしない! 忖度国民がいかに多い事か! 我が国は、弥生人の血の色が濃くなってしまったのだろう! しかし、海外の情報の方が、距離感があり、五輪で自国
の選手が関係するのであれば、科学的な判断は冷静であり、真実である。海外からの福一事故の情報を、日本酷では公表しないでしょう! マスコミがスポンサーの忖度をしているから!
まさに、あべの圧力に負けているのです。こんな日本酷はいらない! な・ら・ぬ!!
・竹谷俊樹  考えを深められる良い投稿 を読ませて頂きました。 こうした発信を日本人ジャーナリストができない空気だとしたら 今は戦前だったと 後で後悔することになるのかもしれませ
ん。
・浜道 かおり  汚い金にまみれて、臭いうんこにまみれて泳いで、放射能汚染されているところで聖火リレーを走る東京オリンピックの何がおもてなしなんだろう。ボラン ティアが熱中症になっても自己責任。医療関係者もボランティアだとさ。集まるのかな? 日本は狂ってんな?。
・Japan, This is the one of country in the world  脱、真実。いつのまにか安全な感じにされている。誰がしているのか、誰が仕掛けているのか。忖度が潤い、リテラシーが枯渇する。
・宮川未都子  ちゃんと見よう。ちゃんと知ろう。小さな日本だけでなく、かけがえのない地球を守ろう!!
・松井隆  アンダーコントロールなんて幻想なのだ。
・Toshiko Kato  この現実を世界に知らせなければ!!
・中尾安余  やっぱりか..涙。
・島田健司  これが、今の福島の現状! これから、世界からの反応が変わるかも!!
・Mika Maru  海外は独自調査している。終結など、良くも言える、嘘つき。
・Hitomi Dames  ”アンダーコントロール”と聞いた時は、自分の耳を疑った人がほとんどだと思う。そして、それが本当だったとわかると驚きと同時に恐ろしさを感じたと思 う。でも、「東京」と発表されると飛び上がって喜んでる人が多いのには圧倒された。そして、嘘はアンダーコントロールだけじゃなかった。
・頼田直真  世界は見抜いている。
・森井洋子  真実に キチンと向き合わなければならない。安全であると言うのならば、まずはそう言っている方達が家族を連れて住んで生活して示すべき。聖火ランナーや 競技者達を生贄にするつもりなのか。
・橋本猛  国民にとって大事な情報は一切、報じなくなり、政権の広報機関化した新聞やTV・ラジオ。これ等の発する情報を只々無批判にそのまま信じる大多数のメダカ奴隷国民に対し、この記事のような情報を伝える努力をせねばならない。
・日下正彦  オリンピック誘致プレゼンテーションに際して、私たちは取り返しのつかない大きな過ちを世界に発してしまいました。ひとつは、「アンダーコントロール」 に代表される物理的事実の虚偽と隠蔽。もうひとつは、「おもてなし」に代表される日本人が持っていた精神的価値観の無残な崩壊です。物理的な虚偽隠蔽に関 しては、下記レポートなどが伝えている現実を理解出来れば何人も否定する事が出来ないでしょう。何れ法的歴史的に私達が、その罪を背負い裁かれなければい けない事は確かです。しかし、「すべてはお金」という誤った経済の価値観を存続させたいが為に、日本人の精神的価値観を歪曲して世界に伝え、踏みにじって しまった文化的精神的大罪は残念ながら今後裁かれる事もないでしょう。見返りを期待しない美徳の「おもてなし」が、誘致という目的の為に使われてしまった 事をかえりみればその罪の大きさは明らかなことです。とても恥ずかしい。云や、恥ずかしいでは済まされない。命に関わる罪なのですから…。取り返しのつか ない汚い罪を犯しておきながら、今までのように選手達の活躍を平穏な気持ちで見守る事など到底出来る訳がありません。過ちの道筋で勝ち取り、心と体を傷つ ける大会は開催する必要ありま せん。「全部嘘でした、ごめんなさい。もっとふさわしい開催場所をもう一度考え直しましょう!」と一刻も早く世界に発する事こそ、本当のスポーツマンシッ プであり、責任の取り方だと思います。
・玉井昭彦  競技中にアスリートや観客や関係者が過酷な気象現象により亡くなる。今からでも遅くない、オリンピックを返上せよ。今からでも遅くない、オリンピックを返上せよ。
・長井弘勝 「アンダー コントロール」が嘘であって正しくは「アウト オブ コントロール」だと公式の場で首相に言わせることが、どうしてできないのか、まったくもって不可思議な国だ。
・Shin Ichi Takado  呆れ果てます。だいたい津波前に東北大地震で電源壞失していた。第一次安倍内閣で、あり得ないと断言している。
・百溪英一  福島第一原発事故と東京オリンピック開催の愚かさを克明に述べた米国の雑誌The Nationの論説記事。開催中止以外の選択は無いということが明確です。この記事
を紹介するテレビ局も新聞も無いのでしょうね。印刷してポスティングすれば市民に読んで貰えるのだろうか。
・Omi Meg Kumiko  貴重。Important.



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