菅 義偉内閣官房長官殿 
29年6月26日
村田光平
(元駐スイス大使)
拝啓
 
 17年前の原発事故の発生に言及した別添の年頭所感を読んで、我ながら旧態依然の現状に驚いております。
 同所感では、市民科学者の故・高木仁三郎さんが、日本国民への最後のメッセージの中で、既に看取されるに到った原子力時代の末期症状の下で「巨大な事故 や不正が原子力の世界を襲う危険」と「放射性廃棄物が垂れ流しになっていく」ことへの危惧の念を表明されたことに言及しております。
 
また、「隠蔽のみならず改ざんにより責任を回避してきた原子力産業」の実態を十分承知しながら原子力推進を続ける日本の関係者全員に対し、高木仁三郎さんが「破局的な事故を待って思い知るのか」と叫ばれている姿が、彷彿と目に浮かぶと記しました。
 
福島事故の教訓を学ばず、再稼働を進める日本の現状は旧態依然であることに衝撃を覚えます。
 もし高木さんが生きておられたら震度7級の地震の発生による2号機建屋の崩壊がもたらしうる大惨事の対策を怠る関係者全員に対して、同様の警告を発するに違いないと思われます。
  
しかしながら救いとなるのは、当時と異なり国民の大半が脱原発を支持していること、不道徳な原子力の全方位の破壊力に世界が目覚めつつあることです。皮肉にも日本は福島事故と東芝の経営危機により意図せず脱原発の促進に貢献し出しております。

 新たな時代の到来を予感させるに至っている日本の現状は、すべての人の道に反することは露見するという天地の摂理(歴史の法則)を実感させており、これが国民の良識の存在をも実感させております。

五輪返上への世論の動きが実感されだしております。本26日の朝日新聞社説の「改革は待ったなしだ」はその一例です。国際オリンピック委員会(IOC)に 対する風あたりも強くなりつつあります。専門家が警告するように福島第一で巨大地震に伴う原発大惨事が再発すれば、東京五輪の開催は返上を余儀なくされま す。最近の地震の頻発に接し、その懸念が深まります。

貴官房長官の一層のご指導とご尽力をお願い申し上げます。
敬具


追伸 第一線でご活躍中のお二人からの反響をお届け致します。

 「驚きました。17年間にもわたり、学ぶ謙虚さがなかった、ということになります。無垢の子どもたちの未来を奪い、世界を汚染している罪深い国民になってしまっています。真実は変わりませんことね。」

 「世界の常識が通じない日本のままです。役所の中も変われない言い訳と忖度ばかり、だと多くの役人も認識していますね。それも出世の為と認識して、一部はあきらめムードのようです。やれやれ!」





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