商社九条の会・東京 第17回講演会 講演録


    

目  次

講師の紹介(司会者)    1
核廃絶と日本の母性文化    1
はじめに    1
愕然とした福島原発の情報    2
福島原発事故とオリンピック開催    2
原発事故処理の国策化がされていない    3
日本のマスコミが報道しない反原発の国際的動向    4
天地の摂理―いつまでも世間を欺けない    5
原子力独裁と軍国主義独裁の酷似    6
多くの国の憲法に9条と共通する平和主義条項    6
原発は世界の安全保障問題    7
憲法は中身で判断すべき-自主憲法制定論はあたらない    8
父性文化と母性文化    8
母性文化が世界を救う    9
民事・軍事を問わない核廃絶が日本の歴史的使命    10
地球倫理確立へ国際倫理サミットの提案    11
環境と未来世代の利益を尊重する文明へ    12
経済至上主義に対する文化の逆襲    12
福島事故の教訓―リスクゼロの原則と経済重視から生命重視    13
日本がIAEA改革の先頭に    14
結び    14
質疑応答    15




講師の紹介(司会者)

今、国会の動きなどを見ていますと、本当に安倍首相の暴走という言葉がぴったりで、本当に恐ろしくなる状況です。私たち商社九条の会は2005年の5月に 発足いたしまして、数々の講演会、学習会を重ねてまいりました。商社九条の会は憲法9条を中心に学んでいく、考えていく、理解していくということを主眼と して今まで活動を続けてまいりました。
しかしこの状況の中でそれでいいのかという声もたくさんおこりまして、昨年の秋から学ぶだけでなく行動したり意思表示もしていこうではないかと方針の一定の変更を行いました。そして今日はその方針を変えての第一回目の講演会となります。
今日講師にお迎えした村田光平先生、「こうへい」さんではなく「みつへい」さんです。正に多彩な外交官活動を続けてこられた方でございます。ここに書かれてないことで今日の講演会に大変相応しい講師であるということをご紹介したいと思います。
村田先生は1996年から99年まで駐スイス大使、その前にも在仏公使とかセネガル公使とかなさっていましたが、現職の大使時代から原発はダメであるとい うメッセージを世界的に発信され行動をされています。ご本人は物議をかもしたりしましたと苦笑交じりでおっしゃっていましたが、大変勇気ある気骨ある外交 官としてその名を馳せた方です。私たちがこれから憲法の守って行く、あるいは脱原発を実現していきたいと考えていく上で大変相応しい先生ではないかと考え ております。今日は「核廃絶と日本の母性文化、その支えとしての日本国憲法の平和主義」という題でお話を90分ほどしていただきます。



講演:
核廃絶と日本の母性文化
~その支えとしての日本国憲法の平和主義~


はじめに

ただいまご紹介に預かりました村田でございます。ちょっと喉を痛めております。今日は大変いいタイミングの講演会だと思っております。今、都知事選たけな わでございます。もちろん私は中立的な立場でありまして特定の候補を応援する、演説するような考えは毛頭ありません。ただ、いまの社会の空気、一つの冗談 を紹介します。今日家内に駅まで送ってもらいました時、車をおりるときに今日もし私が夜帰らなかったら、それは2つの理由があると、1つはボケだと、もう 1つは身柄を拘束されると。それほど私は今日は覚悟を持ってお話したいと思っております。
まず近況報告でございますが、私はこの年末年始大変忙しかったんです。いろんな情報が入ってきています。これはもちろん全部マスコミには出ません。ですの で私はインターネット、パソコンと首ったけで、せっかく昨年末白内障を手術したのですが、なんかぼやけて見えるようになりました。

愕然とした福島原発の情報

皆さん今日私のお話を聞きますとある意味では愕然とされるんじゃないかと思います。それは私自身も愕然として身震いを感じたことでございます。そこから皆 さんに紹介したいと思います。それは、エルワージーさんという有名な平和活動家、この方は女性で「10人の賢明な女性グループ」というグループを作ってお られまして、オックスフォードリサーチグループの創設者ですが、この方がカリフォルニアに住民から入手した「ロシア国防省極秘報告」なるものの内容を読み まして慄然としました。
お配りしました資料をご覧ください。一番最後の別紙でございます。
これは未確認の極秘の文章ですね。12月31日に、低レベルの核爆発が福島第一で発生したというものです。そしてその前に東電も認めているのですが、不可 解な水蒸気ガスが何日かにわたって12月下旬に発生していました。この文書を見た途端、私は3.11の時に3000万人以上の人の避難計画を立てざるを得 ない状況に追い込まれた日本のことを思い出しました。これではもう東京に住めなくなるのではないかと。そして本当に暗然とした気持ちになっていました。幸 い私は最近、いま日本が直面するのは国家の危機であって、電力会社の危機どころじゃないという考えから、主管官庁の事故対応の責任者とコンタクトを取れる 状況にあったわけです。
早速その部署に電話をしまして確認しましたところ、その結果、核爆発と思われたものは同じ12月31日に茨城県に発生した地震であったという説明を得たわ けです。そこで私は関係方面にその情報を流して、少なくとも私のその情報を得た人たち、その第一報に接して愕然としていた方々は一安心だったと思います。
しかしながらその内容をご覧になりますと、例えば3号機の設計者は、もうチャイナシンドロームは避けられないということを事故直後に語っているとか、アメ リカが1万4千万人分のヨウ素剤を購入したとか、それからこれから放出される放射能の量はチェルノブイリの10倍以上じゃないか、そういうようなことと か、アメリカの西岸ではすでにアザラシ、アシカ、北極熊、海亀等々の大量死が見られるなどとあります。これは他の筋からもそういう情報が流れているわけで すけれども、こういうことを見まして本当に愕然といたしました。
他方こういったことは一切マスコミは報じません。

福島原発事故とオリンピック開催

そしてそういう中で私が一番大変だと思ったのは、実は今朝ですがニューヨークの私の協力者、元国連のアドバイザーの松村昭雄さんから電話があり日本の今の 状況は友人の元空軍将校のスコット・ジョンズ氏が最近記事を書きまして「日本はタイタニックだ、そしてバンド演奏がまだ続いている」としてリンピックで浮 かれた状況を揶揄している記事のことを報告してくれました。そして彼曰く、これまで援助の手を何度も差し伸べたのに全て断った日本は、そしていまだに全力 投球していない日本は、最悪の事態が起きても同情はされないだろうとそこまで言われだしたとの電話がありまして、まず皆様にご紹介する次第です。
インターネット新聞では「福島の白煙柱から、3日から1週間の間に放射能雲がやってくるので(アメリカ)西岸の住民は避難の準備をしなければいけない」と 伝えられております。ところがそれもそういう情報もマスコミに流していますが一切出ません。ついに1月9日になりまして日刊ゲンダイが書きました。これは 1月9日発行のものですが、3号機から白煙が出て、米西岸の住民に対して放射能被害対策をとるよう呼びかけが行われたなど、専門家の意見も加えて報じてお ります。
いずれにしましても今1号機から3号機は線量が高くて誰も近づけない、ロボットも線量によって故障して仕舞う、そういう状況です。溶解した燃料棒が地下に すでにどのくらいもぐっているか等一切分からない状況が続いているわけです。そういう中で先ほど紹介しました3号機の設計者は、チャイナシンドロームは避 けられないということを言っているという事が、ロシアの国防省の文書で紹介されているわけです。そういう中で福島第一の現状は、一昨日の古館さんの報道ス テーションが由々しきことだと小声で言って「400トン流れている冷却水のうちの8割近くの310トンが実は漏れていた」と紹介されました。ということで 福島第一の危険な現状について一般に国民は全然知らされてないわけです。
東京オリンピックに示された危機感の欠如は決して放置できないと思いまして私はできる範囲でいろいろインターネットだとか活用して日本国民を目覚めさせな ければいけないという努力を続けているところです。海外は今度のこういった一連の状況で大変懸念を深めています。当然、東京オリンピックの安全性について 問題にするはずです。現に国際オリンピック委員会のバッハ会長に対して、著名な科学者が射能被害の現状、そしてその危険性、子供に与える影響などを取りま とめて報告しているところと聞きました。そして常識的に考えましても当然ですけれども、IOC(国際オリンピッ員会)としてオリンピックの安全性につい て、このような情報が世界に回っている以上、当然中立的なチームを結成して調査団を日本に派遣すべきだという正論がどんどん盛り上がってきています。当然 です。もしそういう正論が届かないならば私自身もそれに加わりたいと思っているほどです。

原発事故処理の国策化がされていない

これが福島第一の現状ですが、今一番多くの努力が向けられているのは、この福島事故処理のことを問題にしないということ。なるべくこれを問題にさせないと いういろいろな試みが新聞でも報じられますね。NHKの番組から自主的に下りた教授の話とか、NHK会長の人事だとか、そういった原発に関する報道規制強 化というものは、もう否定できないほどあちこちで確認されております。
そういう中で、憲法で日本は国際社会で名誉ある地位を得なければならないとされているところが今や完全におかしくなっている、信頼を失墜していると思いま す。今日本は地球環境に対する加害国になっているわけです。今どれだけの放射能が出っ放しであるか、この数字すら2年にわたって東電は同じ数量を変えてお りません。毎時1千万ベクレル、それだけです。何度電話してもそうです。こういう状態ですね、世界が満足するはずはないと思っております。旧ソ連ではチェ ルノブイリに事故の後30万人を動員して、そのうち3万人は軍隊を動員して僅か7ヶ月で石棺を作り上げたわけです。それと比較して日本は最大限の対応がな されていないのです。
それにつきましては最近、昨年の年末に現地で働く下請け会社の責任者から私に電話がありました。それは今4号機から燃料棒を取り出しているけれども、この 作業は実は単純で、短期間の訓練ですぐ出来るようになる、然るに今は毎日8時間の体制であり、これを3シフトで24時間体制にすれば今年の夏までには完了 することができるとのことでした。私はこの話を全て関係者に伝えました。しかし、未だに8時間体制でまだ80本しか除去作業が終わってないということで す。
要するに私は事故処理の国策化ということを口を酸っぱくして言っているわけです。いまだに国は前面にでるとまで言っているんですが、その意味は数百億出す ことで終わっているわけです。全然桁が違うわけですね。本気でやり出したら何十兆かかる事故処理です。それが最大限の対応がなされてない。トッププライオ リティとして取り組むべき原発事故処理にかんする国の責任がいい加減になっている。
国際社会は日本に対して厳しい要求を突きつけてくると思っております。当然のことだと思います。メキシコ湾の原油流出の時は目に見えたから圧力が加わって 処理できたわけですが、放射能の場合目に見えない、それをいいことにしています。事故後3年に経ってもいまだに事故処理の国策化が実現してない。これは非 常に重大なことだと考えております。

日本のマスコミが報道しない反原発の国際的動向

こういうお話をすれば私の今日の憲法9条に対する考えはご理解いただけたものと思います。要するに私は原発事故が発生した後、いろんな新聞社から問い合わ せがあったときに、事故発生以前に全て言い尽くした私としては論議するつもりはない、この期の及んで原発を容認するのは不道徳だというその一語で片付け る、いまだにそういう立場を貫いております。そしてこの倫理、道徳問題こそこれからの世界をよくしていくための鍵であると考えておりますから、後ほど触れ たいと思いますが、ずっと私は国連倫理サミットの開催を呼びかけているところでして、この訴えに対して国際社会が動き出しております。
それはユネスコクラブ世界連盟が2013年のフロレンス会議で3月11日を地球倫理国際日にするよう国際社会に提案することを公式に決めたのです。これは 画期的なことだと私は思っております。マスコミに知らせましたが、一切報じませんでした。更にマスコミが報じないことを列挙いたします。
1月27日池袋西口で小泉元総理、細川元総理の街頭演説がありまして、そこで小泉さんから耳にしたことは、昨年の秋に世銀の会長いや専務理事、それから国 連事務総長潘基文さんが、国連と世銀としては原発プロジェクトには融資しないというそういう方針を発表したということです。日本のマスコミは一切報道しま せん。
1985年にノーベル平和賞をとったIPPMW(核戦争防止国際医師会議―注. Wikipedia:1980年設立、アメリカのバーナード・ラウンとソ 連のエーゲニー・チャゾフが提唱、本部はマサチューセッツのサマービル)、ここがこれまではあくまでも核兵器反対の立場だったわけです。ところが昨年6月 ついに平和利用についても反対の立場に踏み切ったわけです。画期的なことです。そして私はこれをマスコミに知らせました。どこも書いてくれませんでした。
更にやはり昨年の暮れに世界宗教者会議がありました。放射能の危険性を指摘して、これから人間と未来の生物の共存のために放射能の害に対する対策を取らなくてはいけないという、長い論議の末の発表を行ったわけです。これについてもなんら報道はありません。

天地の摂理―いつまでも世間を欺けない

このように挙げていけばきりがないわけですが、要するにここで私が申し上げたいのは天地の摂理というものがあって、いつまでも世間を欺けないということで す。天地の摂理というのは実は3年ほど前私が作った言葉ですが、天の摂理と言いますと宗教めきますので、哲学であることを示すために母なる大地を加えて天 地の摂理としました。天の摂理は宗教で、自然の摂理は科学ですが、天地の摂理は哲学です。そしてどういう哲学かといえば、長い悠久の歴史から発見される歴 史の法則です。私がよく例示するのは「奢れる者久しからず」「盛者必衰の理」「ベストを尽くせば報われる」などです。そしていつまでも世間を欺くことはで きないこと、これが非常に重要です。今私はマスコミが報じないで来たことを紹介しましたが、先ほどの世銀、国連の例について言えば、小泉総理からそれがみ んなに明かされるわけです。
やはりこの天地の摂理があるからこそ私は何が起きても起きることはベストと考えます。地球と人類を守る天地の摂理は働くとの考えでおりますと健康にいいということを発見しました。

原子力独裁と軍国主義独裁の酷似

私に言わせれば今はどんどんどんどん墓穴が掘られております。
そして特に先ほどの日本の国際社会における名誉ある地位を保つと言う観点からして極めて重大なことは、ついに安保理の場で韓国・中国が日本を非難する、そこまで来てしまったという事だと思います。
やはりその背景には、私のレジュメのところで米国の役割の評価、軍国主義独裁と原子力独裁、ここに関わる問題だと思っております。要するに原子力村、これ は私の経験からすれば原子力独裁ですね。どんな正しい意見を言っても完全に無視される。それは正に原子力独裁そのものであります。この原子力独裁と軍国主 義が全く似ているということに気がついたわけです。どこが似ているか言えばと、やったことを悪いと思わないで反省をしない。それからまた巻き返しを行う、 夢をもう一度と巻き返し行う、それがドンぴしゃり一致するわけです。しかしこれに対しては救いが天地の摂理であり、将来を楽観しております。
軍国主義、原子力独裁についての指摘は我ながら傑作だと思っております。原子力独裁、軍国主義、反省をせず巻き返していくという点で全く同じです。
そして憲法9条の問題にしましても、問題の本質は一部の頑迷な政治家と保守層の考えである。アジアで戦前、戦争中に行った侵略を悪かったと思ってない。そ こがあるからこそ対中関係、対韓国関係が生じている。要するに歴史認識の問題だと思います。これはもう議論する必要はないと思います。日本にしましても 300万人が犠牲になった、中国も1000万、その他アジアにも多大な影響を与えた。これはもう論議の問題ではなく、本当に心から謝らなければただではす まない。ドイツはナチを絶対否定するという市民がいたからこそ戦後の処理ができたわけだと思います。日本はそれができていない、それはやはり一部に侵略は 悪くなかったのだと、そういう立場を取る人たちがいるからだと思います。従いまして、私はこの9条を守っていくべきなのは当然であると思いますし、それは そういった過去の歴史に対する正当な認識に関わる問題だと、そのように思っております。

多くの国の憲法に9条と共通する平和主義条項

ちなみに9条につきましては、よく日本だけがこれをもっているというのは、専門家に言わせますと必ずしも正しくないようですね。調べてみますと187カ国 のうち156カ国が平和主義条項を持っているという調査もあります。ただ国際紛争の解決手段として戦争を放棄するという、そういう明確な言葉を使った国と しては日本の他にイタリアとかハンガリー、エクアドル、アゼルバイジャンなどがあります。しかしいずれにしましても平和主義そのものは決して例外ではない ということだけは言えるようであります。
そしてちなみに9条につきましては、最近ノーベル賞の候補に推薦するという動きがあり、私も賛同を求められて、その趣旨には賛同するとお答えしております がドイツはすでにNATOの範疇で軍事力を行使する状況になってきている。それに対して日本はそれをこれまで避けてこられた。これは正に9条のおかげだと 言えると思います。

原発は世界の安全保障問題

まず日本の安全保障問題については、私はもう3.11の前から、本当に意味を持つ日本の安全保障問題は原発であると言い続けてきました。それが福島によっ て完全に立証されたわけです。今世界の安全保障問題として私は4号機問題をあげております。4号機が崩落すればもうたちどころに東京は住めなくなる、日本 経済は壊滅する。世界経済の壊滅に繋がっていく。そして海洋汚染は拡大し大気の汚染も拡大する。まさにこれほど現実的な安全保障問題はないのです。 今晩 でも政府及び東電も認めているように震度6強以上の地震があれば4号機は崩落するわけです。それなのに全然危機感が見られない。
すでに1年半以上前に、野間文学賞の授賞式で細川元総理は4号機のことを思うと夜も眠れないと言われ、その危険生を訴えられました。私は感銘を受けまし た。この4号機問題だけでも国の将来、世界の将来を考えると眠れなくなるというのが本当の、本来の政治家のあり方だと思いますが、そういう政治家はほぼ皆 無ですね、今の政界では。これは私に言わせれば正に想像力の欠如に起因すると思います。
この福島事故の教訓については後ほど触れますが、やはり最大の教訓の一つは指導者の条件として感性と思いやりという必要条件を加えねばならないことだと考 えております。感性の制御のない知性はエゴイズムになりかねないのです。思いやりを備え人類と地球の将来を思いやれる「グローバルブレイン」と称しうる真 の指導者はすべての分野に存在しなくては行けないと訴えることで学生に大きな夢を与えるものであることを大学での経験で知りました
今日本の置かれた立場はフクシマ事故により大きな深手を負っております。
原子力村はその罪深さを全然感じないで巻き返しをやっている。その巻き返しの最たるものは昨日の新聞に出てましたが、新しい原子力委員長を任命です。そも そも原子力委員会というのは私はもう10年以上も前から、原子力委員会を改組するべきことを言い続けてきました。もはや原発推進は国策ではないはずです。 ところが原発推進国策の仕組みが全然改められていないのです。そしてその最近の最たる例は原子力委員長の任命です。これは天地の摂理からしますと、墓穴で あると、私はそのように思っております。

憲法は中身で判断すべき-自主憲法制定論はあたらない

それからよく憲法改正論でよく指摘される点は、あれは占領下で作られて日本が作ったものじゃないから自主憲法が必要だと言うのですが、軍事独裁は独裁主義 を自ら改めることはできないのですね。だからこそ敗戦という契機に、アメリカの役割で今の憲法は出来た、しかしその憲法の中身が重要なのです。その中身に ついては非常にいい中身であると認める人が多数おります。そして現に憲法制定に携わった人たちは法律の専門家をはじめ、優秀な大学の卒業者等々多士済々 だったと言われます。そして何よりも中身で判断することが必要であって、正に独裁、軍事独裁の下では到底いい憲法案は生まれ得ない状況だったのです。そう いう意味で自主的に作られなかったから改正する必要があるという論理は当らないと思っております。
その意味で最近の情勢とオリンピックの問題について取り上げたのは、お手許にお配りした菅官房長官宛書簡です。これは9ページにございます。先ほど紹介し ました現地の会社の責任者からの私への報告を書いております。その方もやはり汚染水問題よりも4号機の問題が最も緊急であるとしておりました。先週私は小 出先生に電話をしました。現状について伺ったのですが、やはり小出先生も一番恐ろしいのは4号機なのだということを相変わらず言っておられました。このレ ジュメの憲法の問題と平和主義の問題、それについての私の考えはご理解いただけたのではないかと思いますので、先に進ませていただきます。

父性文化と母性文化

そこでぜひごらんいただきたいのは父性文化と母性文化の比較表でございます。8ページをご覧ください。これは私が2年前に核戦争防止国際医師会議の世界大 会がバーゼルでありまして、それに参加した際スピーチを頼まれまして、そのスピーチ用に作ったものでございます。これが非常に好評を博しまして、私はいま だにこれをよく使っています。
ざっと見てまいりますが、父性文化、そもそも父性文化は一神教の考え方ですね、ユダヤ、キリスト教。そしてそれに対して母性文化、これは正に日本文化の真 髄だと私は思っておりますが、その違いを列挙してみました。まず父性文化が直進で進歩というのに対して母性文化は進化そして循環型。他者との関係につきま して父性文化は自己中心、これに対して母性文化は連帯。それから競争に対しては調和、対立に対しては協調、弱者切捨てに対しては弱者への配慮、排他性に対 しては開放性、厳格に対しては寛容、ヒエラルキーに対しては対等。こうやって列挙していきますと非常に差が大きいことに気付かれると思います。自己表現と の関係では知性重視に対して先ほど申しました感性とのバランスを重視する、そして一方は人間性に潜む強欲に目をつけ、母性文化は少欲知足、これは仏陀から 始まってヨーロッパでもミケランジェロとか戦後におけるシューマッハという経済学者も説いております。少欲知足は普遍的なモラルですね。
一方が権力重視に対して哲学の重視ですが、この哲学を重視する考えについてはプラトンの有名な言葉があります。「全ての王様は哲学者でなければならない、 さもなければ人類の不幸は無くならないだろう」という言葉です。母性文化重視というのは決して東洋に限られたことではありません。それから目的達成の手 段、一方は実力行使、戦争が最も典型ですね、それに対して対話。トップダウンに対してボトムアップ、指揮統制に対し自発性重視。環境との関係では自然を征 服するというキリスト教的なそれに対して共生(トモイキ)です。そして頭脳では左脳に対して右脳。その他絶対主義に対して相対主義、神に対して生命、保守 主義に対して革新主義、原子力エネルギーに対して自然エネルギー、独裁に対しては民主主義という特徴が指摘できます。
英雄は父性文化、流血の上に築かれるのが英雄ですが、それに対して偉人は母性文化です。ガンジー然り、トインビー然りです。母性文化と父性文化との間にみ られる相違に全ての違いを凝縮することには大変なメリットであることを発見しました。それは何かと言えば、これによって宗教対立、イデオロギー対立、文化 対立、全てを超越できるということです。右・左なんていう分け方はもう古いのです。父性・母性の視点から見ると見事に説明できます。そのいい例が4年前の ヨーロッパの選挙でして、すべての選挙で右翼が勝ったと言われました。ところが中身を見ると弱者に対する配慮では右翼が左翼を上回っていたのです。やはり そういった母性・父性文化の軸で考えると納得がいくメリットがあるのです。そこで最近私がよく言うのは、ある意味でイスラエルはまさに父性文化のチャンピ オンですが、ただそのイスラエルがもしこれにしがみついて発想の転換をしないと、イスラエルはなしになってしまうと、そういう話をイスラエル大使、幸い最 近着任された女性の大使に手紙・メッセージを送りました。私に返事くれる大使は一般にはごく少ないのですが、それにもかかわらず返事をくださいました。や はり女性は命を重視するという観点から共鳴が得られたのでしょう。私がよく母性・父性と言うと、それを若干誤解して女性文化というふうに理解される方がか なり多いわけですが、これは必ずしも正確じゃないんです。しかし実態としては母性文化は多くの女性がそれを持っておられるということで、そういう意味では 女性の指導者がどんどん現れるということは、全てが当てはまるわけではありませんが、非常にいいことです。そういう誤解によって女性の支持者が増えている ということで気を良くしているわけです。先ほどご紹介した.エルワーズさん、この方は非常に私をサポートしてくださっています。

母性文化が世界を救う

その意味では私はこれから母性文化が世界を救うと思っています。そしてこの母性文化と言う場合には、それは発想を、発想だけでいいんですね、母性思考、こ れによって解決すると。皆さん、国のレベルではブッシュ大統領からオバマ大統領にガラッと国柄が変わるわけです。オバマ大統領は武力行使をしたくない。こ の間も見事ですね、武力行使を回避しました、議会に決定させてですね。これは深慮遠謀の解決だと私は思っております。そして人間レベルでも母性文化は、父 性文化から母性文化に変わったいい例が中谷巌さんですね。政府に対する提言が格差拡大を招いたということで後悔している。そして悔い改め、母性文化の立場 に転換した例があるのです。
そういう意味で母性思考というのがこれからの平和実現には不可欠だと考えます。それは私のこのリストを見ますと一目瞭然です。歴史が立証しておりますが。 父性文化は必ず戦争、破局に至る。第一次大戦、第二次大戦、下手すると核戦争となる。そういう意味で母性文化の重要性は世界を救うものとして認識されうる のです。 この点につきましてはアメリカが理解してくれたのですね。前任のルース大使は私に3通手紙をくださいました。私みたいな立場に対してです。アメ リカという国の大使が3通も手紙をくれる、これはオバマ大統領を評価している、堂々と評価していることが伝わったのだと思います。私はもう再選される前か らオバマ大統領は再選する、なぜならば母性文化の潮流を世界に広める歴史的役割があるからだと公の場でずっといい続けている。私の国連倫理サミットの提唱 を含め、歴年の努力というのはオバマ大統領のビジョンの実現のために力を合わせることの大切さを思い起こさせるものであるので感謝するという手紙をいただ いたわけです。
嬉しいのはケネディ大使の着任です。ケネディ大使は私の表現で言えば母性文化大統領、であるケネディ大統領、母性文化大統領であるオバマ大統領、その系統 で母性文化大使であるケネディ大使。私はそういう意味で、核廃絶は今度はその実現に非常にいい体制ができた。もうご存知のようにケネディ大使は広島、長崎 に行ってますし、オバマ大統領の広島訪問実現を希望するという立場も伝えております。

民事・軍事を問わない核廃絶が日本の歴史的使命

お配りした資料に日本の歴史的役割というペーパーがございますが、私は民事、軍事を問わない核廃絶、これがこれからの日本の歴史的使命であること、これが 福島の教訓であるという文章を昨年発出しております。その中でオバマ大統領に福島事故処理がいまだ国策化されていない、全力投球がなされていない、そうい うことを指摘しました。そして福島事故の教訓の一つは経済重視から生命重視に移行しなければならないことを私は強調したわけです。
それから潘基文国連事務総長に対しましては、いまだに福島の事故は東電の経営危機として対処されている、そして原発の再稼動が認められていることを指摘しました。
私は2004年に全政党の党首や日本の指導層に日本の命運は、電力会社によって左右されているという警告文書を発出しました。その通りになってしまったわ けです。いまや確信を持って、世界の命運は電力会社によって左右されているという警告を発しました。そしてケネディ大使にはケネディ大統領の人道主義と平 和主義、その精神を継承されておられる、そしてその精神はオバマ大統領により共有されていると伝えました。。そういう中でオバマ大統領は核廃絶という課題 に挑戦されている。ただオバマ大統領は核兵器のない世界と言っている。そこで日本の教訓をくみ取ってもらってですね、そのビジョンを核兵器も原発もない世 界に高める、高めてもらう。そこまで持っていくのが日本の歴史的使命であるということを伝えております。
そして安全保障と言うとすぐミサイルとか、そういうような技術論に走るわけです。先ほど申しましたように最大の安全保障問題は原発の存在なのです。そうい う意味では核廃絶は日米間の格好の協力のテーマになり得るわけです。協力の分野になり得る、中心的な協力の分野にしなければならないということをケネディ 大使に手紙に書きました。今日のテーマでは核廃絶と日本の母性文化となっておりますが、母性文化的思考形態が世界平和には必要です。核廃絶も勿論世界平和 に必要です。

地球倫理確立へ国際倫理サミットの提案

そういう中でいま日本が世界に向かって発信するものとして、一番最後、レジュメの5に書いておきましたが、日本は三位一体の発信というふうに私は呼んでい ます。それは何かと言うと、これから民事、軍事を問わない核廃絶を目的とする、そのためには2つの条件がある。一つは今の力の父性文化に立脚した父性文明 を和の母性文化に立脚した母性文明に変えなければ核廃絶は実現しない。そしてこの文明を父性文明から母性文明に移行させるにも大きな条件がある。それは先 程来指摘しております倫理の欠如の問題です。
私は今世界が直面しているのは金融危機でも経済危機でもなく文明の危機であり、そしてその最も根源的な原因は倫理の欠如であるいう認識を持っております。 まず地球倫理を確立しない限り今の力の文明から和の文明に変えられない。そしてこの地球倫理確立の入口となるのが国連倫理サミットであると国際社会に訴え 続けておりました。そしてオバマ大統領にも駐日大使を通じてずっと訴え続けているわけです。私は天地の摂理が働けば決して夢ではないと、しかも時間が限ら れているんですね。今アメリカは震え上がっていると思います。100基以上も原発を抱えている。原発の存在そのものが最大の安全保障問題であるということ を悟っているのです。ですからもう原発の新設も行えないし、廃炉も始めている。最近5基の廃炉を決めている。そういうことで原発の存在そのものが安全保障 問題であるということです。一部で言われている、日本がこれから核武装する、これはとんでもないことですね。それらを国際社会が認めるわけがない。そして それを阻止する動きが原発を攻撃対象にすれば、50基以上の原発を持つ日本は最も脆弱な国となる。核武装などとんでもないことだと言えると思っています。
これと関連しまして今集団自衛権の問題が論じられようとしておりますが、このような原発の存在を踏まえて、もし日本が集団的自衛権のもとで軍事力を行使し た場合に最も恐れられるのはテロ対象国となる道が開かれるということですね。これほど危険はないわけです。このことだけで集団的自衛権は反対できるし、反 対すべきだと思っております。そしてそれで十分です。専門家は専門の軍事の領域でしか考えようとしません。私は非常に不満です。そういう専門家にずっと 言っているのです。なぜ原発の存在そのものが最大の問題であるということを認めようとしないのか、今でもその問いかけを行っております。

環境と未来世代の利益を尊重する文明へ

そして和の母性文明の中身が問題ですが、その定義は非常に簡決です。倫理と連帯に基づき環境と未来の世代の利益を尊重する文明、これは私が大使を辞めて最 初に出版した「新しい文明の提唱、未来の世代にささげる」という本の中で書いた定義です。いまだにそれを使っております。
それは3つの方向性を有します。利己主義から連帯へ、物質中心から精神中心へ、貪欲から少欲知足へ、です。その3つの方向性については非常に支持を得られ るものであるということを経験しております。2005年に私はOBサミットに招かれまして、そのときシンポジウムがありまして、そこでこういう話をしまし たら、その後に何人ものアメリカ人が来て賛成だと言い、拍手されたので非常に意を強くした思い出があります。そしてもう一つの地球が賄いきれない大量生 産、大量消費の時代は終わったとの考えは細川元総理が指摘されていることです。ちなみに小泉さんにしろ細川さんにしろ、私が15年にわたって発信を続けて きましたが、今や立場が全く同じになり、私は非常にうれしく思っております。特に小泉さんに対しては一方的発信でしたが、無駄ではなかったと思って非常に 喜んでおります。
そして今かけているのは文明の在り方につての論議です。大体地球1個で地球2~3個分の生活をしているのは長続きしないということです。澄んだ頭で考える とそれは分かりきったことですね、それは先ほど言った感性の制御のない知性はエゴイズムであるということに通ずることだと思います。やはりこういったエゴ イズムは環境を破壊し世界を悪くしていきます。軍国主義しかりだと思います。原子力独裁然りだと思います。ということで私は15年以上も前から政財官文化 は地球市民文化にとってかわられると言って来ましたが、まさにそういう動きが現実に感じられ始めました。私は幅広く発信活動をしながらそれを実感しており ます。

経済至上主義に対する文化の逆襲

そして次の3つの課題に移りますが、第一が地球の倫理の確立、それから先ほど申しましたグローバルブレインの養成、第三が経済至上主義に対する文化の逆襲 です。私はこの10数年来、少数意見として脱原発を訴え、この経済至上主義をどう変えていくかということを考えてきました。文化の逆襲ということが一番い いのではないかということで文化の逆襲を言い続けてきました。世論も、環境問題に対する認識も、こういった文化の逆襲によって変わり得るものだと思い至り ました。そして私はそのアプローチは間違ってなかったと思います。先ほど短い表現でいろいろ申しました。戦前戦後の流れは父性文化と母性文化でくくれば、 本来の母性文化が維新以降、「坂の上の雲」ということで父性文化導入し、これが第二次大戦の破局に至りました。ところがその大戦後取り入れたのは、また別 の形態の父性文化でした。経済至上主義です。そしてこれが招いた破局は福島原発事故だいえます。この総括は当っています。反論できる方がいれば反論してく ださい。父性文化は必ず破局に至る。そういう父性文化に対する抵抗が文化の逆襲だと思います。母性文化により破局の到来を未然に防がねばなりません。

福島事故の教訓―リスクゼロの原則と経済重視から生命重視への転換

次に福島事故の教訓に入りたいと思います。福島事故の教訓として私はまずリスクゼロの原則というものを掲げましたが、これはどういうことかと申しますと、 有名なドイツの科学者 ハンス・ペーター・ドールさん、この方はドイツの物理学研究所のマックスプランク研究所の元所長さんですが、「人間社会に受け入れ がたい事故をもたらす科学技術は、その事故発生の可能性がどんなに低い数値ではじかれようと、それが完全にゼロでなければお払い箱に」と言っている。これ こそ正に福島の事故の教訓だと思います。
いまだに10万以上の人が原発事故によって避難生活を強いられている。一切合財を失い、幸福を失い、人生設計も台無しにされたのです。そしてこれから10 万年以上も管理しなくてはならない廃棄物問題があり、これから表面化する犠牲者の数がどんどん増えてくる。原発事故はいったん起きてしまえばもう完全な対 策はできない。このような事態が生まれる可能性は完全にゼロにしなければならない。それが正に福島事故の教訓です。要するに脱原発、原発ゼロです。これし かない。
これを否定するのは如何に不道徳であるかということを思い知る必要があると思います。論議の問題じゃないのです。フランスも、日本もそうですが、要するに 議論をするというようなことになれば、一般国民はみんな専門家に太刀打ちできないわけです。原発をゼロにするならその代替は何にすると、お決まりの質問が 来るわけですね。小泉さんはこの間見事に返事しましたね。そういったものは優秀な専門家が考えれば正しく答えが出るのだ、自分にはそんなこと答えられない と。正にそれが解答なのです。ですからそんなこと答えられないのです。専門家が考えれば必ず答えは出るのだと言われました。議論となればお決まりの応答要 領が用意されており、一番喜ぶのは原子力推進者です。原子力村が一番避けたいのは倫理、道徳論だと思っております。私は国連倫理サミットの開催を主張し続 けておりますが、4年前に言い出した地球倫理国際日の創設をユネスコクラブ世界連盟までが昨年認めてくれました。必ず世界には心ある人たちが存在するとい う自信を持っております。
それから福島事故の教訓は正に経済重視から生命重視への転換です。父性文化が最も価値ありと認めるものが理性です。母性文化が最も価値あると認めるものは 生命です。福島事故の教訓は正に経済重視から生命重視への転換です。貪欲の資本主義はもうおしまいにするということだと思います。そしてもう民事、軍事を 問わない核廃絶の実現に貢献するという歴史的使命を日本は福島事故によって担わされたという自覚を国民は共有しなければなりません。これは非常に重要なこ とです。日本だけが人間社会に許容できない原爆と原発事故を体験させられたわけです。世界はまだ福島の教訓を悟っておりません。世界は相変わらずであり、 日本ですらいまだに原子力推進をやろうとしている。しかし広島、長崎、福島を経験した日本だけがそんなことをやっちゃいけないということを心ある人は皆確 信しております。ですからこれから日本は世界に教えるものがあることを忘れてはなりません。
そして先ほど申しましたように、原発を抱えた国々は事故の発生の可能性に怯えているのです。私はインドとかフランスとかそういうところに何人もの友人がお りますが、そういう人達にメッセージを送っております。このままでは、日本のように原発が事故を起す日がついそこまで来ているのではないかと憂慮されま す。これを未然に防ぐためには、日本で今起きていること、実態を正しく伝えるべきだと思います。その意味でロシア国防省の秘密文書が世界に与えた衝撃はも のすごいものがあると思っております。そしてあの文書を最初に見たときの絶望観だけはもう二度と味わいたくないと思っております。

日本がIAEA改革の先頭に

そして日本国民を目覚めさせることとなるのは、近々表面化すると思われる東京オリンピック返上問題とオリンピック国際委員会による調査団の日本派遣の実現 だと私は見ております。私は都知事選挙によって日本は変わりましたと、確実に変わりましたというふうに言い出しております。思わぬ人から今回の選挙で変わ るという思いを伝えてきます。今日も出掛けに電話がありました。そういった方々の直感が正しいと思っています。
そして私はせっかちですので、もう都知事選の後のことを考えておりました。今まで若干遠慮しがちだったIAEAの改革に日本は先頭に立つべきだという発信 を始めようと思っています。本部がウィーンにあるIAEA(国際原子力機関)は電力会社と一蓮托生の機関であり、放射能の危険性を矮小化する、福島事故は なかったことにする、そういう戦略を持っている。日本の立場、特に被害者の立場からすればとんでもないことで、私は1年半前にアメリカの議会の院内ブリー フィング集会に招かれまして、行けなかったのでビデオメッセージを送りました。そこでは私は福島の事故の避難民の拡声器の役割を果たすと前置きで述べ、今 日お配りした資料にある通り脱原発を世界に訴える趣旨のことをビデオメッセージで英語で10分ぐらい話しました。ちなみにこれはなんとヒアリングマラソン の教材に使われているそうで、私はそれを聞いて嬉しく思っています。私の英語はブロークンですけれども、教科書に使われると聞きました。ここではそもそも もう平和利用という言葉すら使うことはおかしいと述べ、どんなにこれによって被害者が出ているか、もう福島事故で最後にして欲しいという事を訴えました。 そして今後は再生可能エネルギーに取り組むべきであると指摘しました。これは細川さんのお考えと全く同じです。小泉さんとも同じです。ちなみに今日本が直 面しているのは国家の危機だと言われているのは細川さんだけです。わたしはそういう意味でこのお考えを全面的に支持しているわけです。

結び

いろいろ今日申しました。しかし、いろいろ世界で起こっている現象を一口でまとめますとこういうまとめ方ができるのではないかと思っています。ようやく父 性文化の支配的だった世界的潮流に母性文化の潮流が現れだしたと。そういう新しい潮流の中で個人と社会については、自然に対する科学技術の限界、それから 知性と感性のバランスの必要性、それから哲学と倫理の重要性と、こういった新しい観点が浮き彫りにされつつあるということです。また国家レベルでは全ての 独裁と覇権というものは最終的には終焉せしめられると、今アラブで起きているアラブの春ではシリア等で紆余曲折が見られますが、長い目で見れば全ての独裁 は終焉せしめられるという流れにある。そして地域統合の大きな流れが始まる。そういうことだと思っています。
ちなみにわたしが母性文化を言い出したきっかけとなったのは2008年の北京オリンピックです。あそこで2008年のダンサーが描いた字が和という文字で した。それでこの和と言う価値観はアジアで広く共有されている。そして日本を眺めると天照大神を源泉とする母性文化が本流であった。そして母性文化の源流 は文献としては中国の老子にたどり着くわけですけれども、この日本人のDNAは縄文文化です。1万年も平和を保った縄文文化というのは世界に類を見ない平 和の継続ですね。そしてそういうDNAは多神教の神道にも根付いております。明治維新後日本は「坂の上の雲」で父性文化の導入を迫られ、これが軍国主義と なり、敗戦という破局に至ったのです。戦後導入された経済至上主義という父性文化は福島という破局を招きました。現状を克服して再び日本の母性文化の本質 を取り戻し世界に広める、もうこれでしか世界は救われないと思います。そして目先のこととして一日も早く原子力独裁に終止符を打つ必要があるのです。
以上でございます。

            ―講演終了―




質疑応答

もう31問もありまして、全部お答えできないのではないかと思っておりますが、なるべく手短になるべく多くの質問にお答えしたいと思います。

1
まず地球システム・倫理学会についての質問ですが、地球と人類の将来を考える学会です。私は常任理事です。事故後2つの緊急声明[(10か国語に翻訳)を 出しました。第一の声明では母性原理の重要性を指摘し、国連倫理サミットの開催と地球倫理国際日の創設を提唱し、第2の声明では3月11日を地球倫理国際 日とするよう訴えました。

2
アメリカのヨウ素剤配布、ロシアのあれなどにでていましたが、これは機密事項ですから、これはアメリカに聞いてみないとしっかり答えてくれないと思います。

3
歴代政権担当者が原発を考えているのは核保有のためだと思いますが、先生のご意見は、ということですが、まさにその通りだと思います。

4
都知事選での都知事候補の誰を支援するかに関わる問題ですが、それについては私の後輩の孫崎享氏が、前日まで両陣営が全力投球して、そしてその段階での1 位の人にすればいいと提案しました。このアイデアは拡散されておりますが、一つのフェアプレイじゃないでしょうか。やはり知事になって原発ゼロを実現する のが一番いいのではないでしょうか。そういう考えに私も賛同しますね。ちなみに細川さんのアイデアに何度か言及しましたが、その彼のアイデアが全く私と同 じでありますが、都知事選について支援する立場ではありません。

5
集団自衛権の行使、これについてはもう絶対に行使を避けるべきです。安全保障とか偉そうなことを言って原発の問題どうするのだと、安全保障の専門家に尋ねたいのです。

6
核燃料棒の移動作業の3交代の問題ですね、4号機からの。これはできるといっているんですね、専門家が。やるべきですね。全力投球が求められているので す。そしてこれも国が全責任を持つ体制に改めないと無理ですね。従いまして同じ会社の人が言っていましたけれども、普通の技術もまだ日本は国際協力で獲得 できてないのです。ですから早く国が主体となってそういうものを導入するべきです。元のアメリカの規制委員の人が言っていましたが、さもないと日本の原子 力村が国際原子力村になるだけです。そういうことです。

7
都知事選の候補についての意見です、これは先ほど、みんなベストを尽くして原発ゼロという大目標に何がいいか考えるということです。

8
安倍さんの軍事強化と原発輸出、アメリカの要請があるのでしょうか、アメリカの要請ではないと思いますね。軍国主義はアメリカの要請じゃないと思います。

9
(都知事選)両候補の統一、これは先ほども申しました通りです。それから今までの政治家の過去を問題にされるのはもちろん当然だと思いますが、問題は何が 一番大事かということ、この時点において何が正しいのか。人間過ちを改むるにはばかることなかれというあの言葉は正しいと思います。ですから過去を問う て、最大の目標を達成できないと思わすのはよくないと思います。ちなみに何度も申しますが、私の考えに言及するだけであって選挙応援演説ではありません。 (笑い)全部宇都宮さん関係の質問ですから(笑い)、宇都宮さんにぜひお伝えください、やはりフェアプレイをやってですね、そして前日の段階での脱原発 NO.1候補に入れると、そのようにしてくださいと。細川陣営にも宜しくお願いします。

10
私に現役時代賛同者がいたかということですが、ほとんどいなかったのです。(笑い)

11
特定秘密保護法もですね、これはやはり文化人が全部反対じゃないですか、これからどんどん反対運動が盛り上がっていきます。今度の都知事選の影響で、すば らしいマグマが発生すると思いますね。ですから今回はもうすでに国民を目覚めさせる上で都知事選は大変な役割を果たしたと、日本はもう変わりましたと、そ のように思っています。

12
戦後国際社会の中で日本は一定の地位を保っていたと断言されていますが、どう思いますか。今は信頼は地に堕ちております。

13
一つは最近のヘイト・スピーチの問題です。やはり格差拡大とか経済情勢にだんだんと問題が広がってくると、現象面でそういう側面がでるわけですね。またそ れを利用しようとする動きもあるわけですね。ですから非常に複雑であることは十分承知しておりますが、こういう時に大事なことはやはり本来あるべき姿から 離れることはよくないと思っております。そういう意味では軍国主義とか右傾化、そういったことで声が出てくると、おかしなことになると思います。

14
母性文化をいかに広げるかということですが、これはやはり話題にするということだと思います。私は全世界にそれを発信しておりますが、先ほど申しましたようにイスラエル大使も返事くれています。そういう効果が出ますから、話題にするということが大事だと思いますね。
それから私の発信の方法はファックスですね、政治家にどんと送りこむ、だから皆さんも家庭でファックスでどんどん送り込まれたらどうでしょう。

15
中国についてですね、警戒心を持たれている方がおりますが、それはやむを得ないかもしれませんが、決してそういう人ばかりではありません。皆さん驚くかも しれませんが私は天タマサート大学で2年前に講義を頼まれて名誉教授の称号を付与されました。やはり私の意図を理解できる指導者はいるのです。アメリカで も先ほど申しましたようにアメリカ大使から手紙を貰いました。私は平和主義と人道主義に徹していますから、必ず理解されるのだと思います。そして中国、私 はいまだに中国語を勉強しておりますけれども、中国人は本当に日本人と変わりないと思うことがよくあります。やはり文化交流をどんどん進めていったらいい と思っております。韓国もそうです。韓国も友人がおりますが、そういうパイプはこれからも大いに活用していきたいと思っております。

16
日本の女性文化、世界の女性文化と日本との違いがあるか、別にないと思いますね。これ、女性となっていますが、母性でいいでしょう。(笑い)母性文化は普遍的にその価値が認められるという特質があります。母性文明の提唱に対しては世界のどこからも反論に接しておりません。

17
一神教を批判しているのかということですが、私は先ほど申しましたように父性文化と母性文化の違いを言うだけで、正にそういう宗教対立を避けるべきだと考えます。そういった意味で一神教の父性文化ということで、キリスト教批判はしておりません。

18
マスコミの問題点を考えて市民として何ができるかとですが、やはり我々の考えをファックスなり活用して行動に表すと非常に有効だと思いますね。そういう実例を私はよく知っております。

19
私の原発に対する不信というのを決定的にしたのはチェルノブイリですね。そしてその前にやはりいいと思うことが、なかなか進まないということをセナガル駐 在時代に日本の援助で太陽エネルギーを導入しようとした際に経験しました。反対を押し切り1991年にこれを実現しましたが、おかげでセネガル大統領とは いまだに文通をしています。

20
今でも帰宅できない親戚の方がた、本当に罪深いと思います。再稼働、世界へ原発の輸出、これらは許されるはずがないです。こういうのを私は墓穴だと思います。

21
IAEA改革に着手、これは正に日本人がやることですからこれから外務省が動き始めれば新たにできることで、東京都知事も、誰か知りませんが脱原発となれ ば堂々とやれる事だと思っています。その次に提案内容ですが、IAEA改革、要するにIAEAは日本に対して原子力安全保安院を経済産業省から切り離すよ う勧告しましたが、核拡散の防止と核物質の拡散をもたらす平和利用の促進という矛盾する任務を担わされているのがIAEAです。とんでもないことだと思い ます。こういう非常識を全世界で認めているのです。これほど恥ずべき姿はない。失格ですね、落第ですね。

22
憲法9条を世界法に嵩上げする方法ということですが、これは確かに難しいと思います。理想ですから。しかしそういうふうにいろんな努力をすると、例えば ノーベル平和賞を巡る動き、これだけでも一応そういう努力は世界に認識されるわけですから、そういう地道なことからやるより仕様がないのではないかと思い ます。理想の実現は程遠いというのが現実だということを承知の上で、そういう試みをすること自身に意義があると思って賛同したわけです。

23
マスコミが世の中のことを世界に発信できないのならどういう方法がとれるか、と言う質問ですが、インターネットを活用しての発信は、ある程度効果はあるの ですね。国連事務総長を始め各方面へのメッセージがどんどん伝わりまして汚染水問題が表面化して、もう日本のオリンピックの東京招致は絶望的でした。とこ ろが「アンダーコントロール」発言が効き、これは今、世界の笑いものになっているんです。日本の信頼は地に堕ちています。その他いろいろありますが。

24
世界の大衆運動の多くを把握していれば、間違った方向に行かなかったのではないか、と言うことですが、アメリカ一辺倒の情報で外交が進められている状況も 皆さん市民の活動、先ほど言いましたが、政官財文化に取って代わる地球市民文化、こういったところから是正されていくのではないかと思います。その意味で も経済至上主義に対する文化の逆襲に繋がることだと思っております。

25
ドイツのような戦後総括がなぜ日本でできなかったかということですが、これはやはり一部の保守勢力が、戦前の権力と結びついて動いている実態が背景にあるのではないでしょうか。

26
それから、何語で各国と話しているのかと言う質問ですが、私が使っているのは英語とフランス語と日本語と中国語です。

27
マスメディアが自由に多くの報道を出来るようにするためにはどうすればいいんでしょうかということですが、私は10年ぐらい前に警告を出してマスコミに文 句を言いましたことがあります。その文書を今また同じように流したいと思います。そしてこの間の細川、小泉両元総理の街頭演説を聴いた書簡の中で、今はマ スコミは報道規制が強まる中で存亡のかかる試練の時期を迎えたと書きました。本当にマスコミが言いなりになって何も役割を果たさない場合は、すでに脅かさ れる大手マスコミの存立が問われることになるのではないかと思っております。

        ―質疑応答 終了―


ホーム

inserted by FC2 system