ライター志望(一級建築士事務所 代表取締役)
宮田潤一郎 メール 佐賀県佐賀市
約2年間一棟売りの投資マンションの販売にたずさわり、その後約13年間宅地開発のほか売買を主体とする不動産業と注文住宅事業に従事。営業・設計・現場管理とあらゆる業務を担当する。高級注文住宅の設計・施工など、幅広い実務経験を持っている。
 数年前より住宅関係の雑誌だけではなく、一般の男性誌や女性誌などにも住宅の特集が組まれています。そのほとんどが見栄えのよい斬新でモダンな住宅とそれを設計した設計士を紹介したものです。そこでは、設計士や建物の完成時のデザインばかりが取り上げられ、実際に工事にたずさわった者たちの大変さや苦労、経年後のその建物の姿などにはほとんど目を向けられることがありません。工事業者がマスコミの表舞台に出るときは決まって手抜き工事のときばかりです。
 そのため設計士は先生や第三者で間違いがなく、業者はごまかしたり手抜きをするもの、というようないわれのない認識がマスコミの手で広まりつつあります。確かにそういう業者も一部にいることは否定しません。ただそれ以上に、間違いのないいい仕事をしたい、という業者もたくさんいるのです。
 また、そういう手抜き工事や欠陥工事もそのもとをたどれば、工事単価の問題をはじめ設計事務所や施主から無理難題を押し付けられているというような要因が浮かび上がることも現実には多いのです。
 職人泣かせという言葉があります。技術的な難易度の高い工事をお願いするという意味であれば何も問題はないのですが、そうではなく手間や材料代(お金)をなるべく出さないでただ働きをさせよう、何かあれば手直し工事にしようとする現実がおうおうにしてあるのです。なかには職人を泣かせてこんないい家を建てましたと自分の体験を出版している人もありますが、泣かされた職人はたまったものではありません。だれでも泣かされて仕事はしたくないはずです。
 また、完成時のデザインがいくら美しくても2、3年もしないでひびだらけになったり、汚れたり、故障、雨漏り、使い勝手などの問題が生じたり、結局根本的に工事自体をやり直すことになったという事例もよく聞きます。デザインが売りの設計士が、見た目を意識して骨組みを細くしたため、屋根仕舞いは終了したものの屋根がたわんで急いで手直ししたというような話しもめずらしいことではありません。そういう場合でもその費用はほとんど工事業者持ちにさせられます。
 これらは表面的な見た目のよい報道とその背後に隠れている現実との齟齬の一例ですが、そのほか住宅を取り巻く様々な話題に関し、これまでの知識と経験を生かし実務上の問題や一歩踏み込んだ多面的な見方をしていきたいと思っております。

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