村田 光平 様

入口紀男 (熊本大学名誉教授・客員教授) です。
村田様の日ごろのご尽力に敬服申し上げております。
以下は 「五輪開催のために感染者数を少なく見せようとした」 と題してご参考までに拝送いたします。
また、これに関連して、このあと、2、3のメールを拝送いたします。
最後のメール (韓国との軍事力比較) では、日本は、ほんのちょっとしたこと (五輪開催のために感染者数を少なく見せようとして最初から検査数を絞ったこと) が、はからずも、社会機能、経済機能、国民生活の破壊から軍事力の凋落まで、すべてにわたって 「命取り」 となったと考察いたす内容です。


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ウィルスは自然界の脅威ですね。我われは原始の昔から、自然界の真実を知り、その中で最善を選ぶことによって命をつないできました。

新型肺炎COVID-19の軽症者等の大半は、現実的には陰性の可能性が高いので、家で自主隔離で自己対応していただいたほうが医療コスト、社会的コスト が低いといえば低いでしょう。そこに一定の根拠はあると思われます。そして、それは、公衆衛生に関する政策的な選択です。しかし、それは自然科学的な選択 でありません。

自然界の脅威であるウィルスに対して、大規模検査・徹底検査をして、ウィルスがどれくらい広がっているかを知り、感染している人を確実に隔離することが、 この流行を抑えていくための唯一の対策であると私は考えております。また、それ以外に真実の対策は存在し得ないとも私は考えております。

4月28日に、アメリカでは検査数 5,593,495人、感染確認者 988,197人と、陽性率 17.7パーセントであるのに対して、東京都は検査数9,827人、感染確認者数 3,908人と、陽性率39.8パーセントです。日本では検査をして初めて感染確認者が分かるという仕組みです。

検査を絞り込むにもそれなりの理由はあることを、多くの都民もそれなりに理解していますが、この絞り込みはどう見ても、やはり尋常でありません。

日本の人口あたり PCR検査数は OECD加盟国 36カ国中 35位で、少なさが世界と比べても際立っております。

https://news.yahoo.co.jp/byline/takahashikosuke/20200430-00176176/

また、日本の人口あたり PCR検査数は世界の 174ヶ国中 121位で、発展途上国の中でも本当に貧しい下位のほうです。

https://www.worldometers.info/coronavirus/#countries

これは、尋常でないというよりも、「とてつもなく異常な事態である」と言ったほうがよさそうです。では、日本でなぜこのようなことが起きたのでしょうか? 

「専門家会議」の答申が最初に出たのは 2月24日でした。3月12日にはオリンピアでの採火式を控えていました。「この夏に東京五輪を完全な形で実施する」ためには、検査を拡大して感染者数を 増やしたのでは、日本が「危険な渡航先」となってしまい、五輪を開くことができません。そこで、専門家会議のメンバーとしては、感染症の専門家などであ り、人工知能(AI)を用いたり、リスクマネジメントなどの新しい分野のことは知らない、そして、何よりもこの夏の東京五輪に水を差さない、忖度(そんた く)を知る人だけが集められました。

その結果、日本では原則として検査を絞ることになりました。(今でも)「武漢からの帰国者またはその濃厚接触者」以外は検査の対象としないことが原則で す。検査に至るには、かかりつけ医が保健所や検査センターに電話をかけても取ってもらえないといった双六(すごろく)のような関門が待ち構えています。

専門家会議は、当初「検査をすると感染者が押し寄せて医療崩壊する」といった理屈を考えました。検査をしないと、結果的に感染者が少なく見えるので、それは、五輪をやりたいバッハ会長と日本の政府にとって都合の良い方針でした。

しかし、ウィルスは忖度をしませんね。自然界の脅威であるからです。そこに日本人の根源的な悲劇が始まったのだと私は考えております。

厚労官僚は、とっくに徹底検査の断行と隔離を「しない」ことを決めていたでしょう。そのうえで権威づけをのために「専門家会議」を開催し、答申させる。 「専門家会議」としては、そこへ水を差すことはできなかったでしょう。「専門家会議」の苦悩も見えます。彼らも就任を拒否すれば社会的に抹殺されるでしょ うし、受ければ「忖度」を強いられるのですから。

「専門家会議」のこの内向きな方針(厚労官僚の方針)も、昨今通用しないことがだんだんと分かってきましたね。検査を拡大しなければなりません。地方自治体の医師会などでは、独自に検査体制をつくることが計画されていますね。間に合えばよいのですが。

「専門家会議」は、自らの過ちを認めて「実は、最初から徹底検査と隔離と情報公開を答申すべきでした。最初から、たとえば韓国のように、熱があるだけで徹 底検査を断行していたら、今ごろはこれほど、費用もかけず、社会機能と経済機能を停止させる必要もなく、中小事業者も仕事を継続し、また、死亡者を増やす 結果ともならなかったでしょう。謝罪します。」と改めて答申しようにも、もうできないところまで追い込まれています。いまさら「アノときコレはホントだと 言った、アレはホントはウソで、コレがホントだ」とはもう言えないからです。

「専門家会議」が最初から「徹底検査の断行と隔離」を答申しなかったことによって、感染者が野放しです。これは、未感染者にとって死の脅威です。これから も多くの国民の命が奪われるでしょう。「御用専門家忖度会議が、無能で無責任であるという、ただそれだけの理由によってである」と私は感じています。

しかし、私のこの感じ方とは正反対に感じる人たちもいます。すなわち、この専門家会議は決して無能でもなく無責任でもない。政権が期待する結論(すなわ ち、如何に、感染者を少なく見せるか)については、その能力を余すところなく発揮しており、専門家の代表として選んでもらったことへの責任を十分に果たし ているではないか。という感じ方です。

政府は、事態が上手くいっていないことの政治的責任をすべてこの専門家会議に帰することができます。

韓国は 1日に10万件の検査能力(ヒト・機材)をもっています。現在は 1日数千件を検査していますが、新たな感染者は 1日に数人以下です。日本が本気で国民の命を守るためであるのならば、片道 2時間ですから、採取した検体を政府専用機で 1日に複数回飛ばせばよいはずです。対価は、フッ化水素か、それが戦略上無理ならば、オリンピック開催費用の数分の一ですむでしょう。

韓国の検査キットは精度が高いことが分かっています。「独島」(竹島、検査キットの商品名)をアメリカは輸入していますが、それを日本が輸入するには、国民感情を配慮するなど、相当の「胆力」が必要ですね。

そこまで行かなくても、この事態で、国内で一日数千件しか検査できないということはあり得ません。単に厚労官僚と御用専門家忖度会議によって、検査数が絞 られているだけです。試薬、機材が足りないということもあり得ません。技術が難しくて技師が足りないということもあり得ません。ありふれた機材です。試薬 は安く大量に販売されています。技術も簡単で、学生でも自衛隊員でも、一日あれば習得できます。






(その2)


Subject: 新型肺炎 (COVID-19) はいつ終息するか


村田 様

入口紀男です。
お疲れさまです。
「新型肺炎 (COVID-19) はいつ終息するか」  につきまして、以下をご参考まで拝送いたします。

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新型肺炎 (COVID-19) のウィルスが世界で猛威をふるっています。いつ終息するかを解明することは、世界の喫緊の課題であると思われます。これにつきまして、二つの重要な予測が ありますので、ご承知かもしれませんが、改めてご紹介いたします。また、これによって現在の社会がどうなるかを考えておくことも必要かと思われます。

第一の予測は 2月24日に発表されたもので、「世界の人口の多くが感染する」 という絶望的な予測です。

第二の予測は 4月14日に発表されたもので、「2022年までに終息し、たとえ再燃しても 2024年までに終息する」 というやや希望的な予測です。

そのいずれの予測も、ハーバード大学の マーク・リプシッツ (Marc Lipsitch)教授のグループから出されたものです。一見して矛盾するそれら二つの予測ですが、一体どういうことでしょう?

2月24日にリプシッツ教授は 「ジ・アトランティック」 という一般向けの雑誌で、「世界の 40~70パーセントが感染して集団免疫をもつに至る」 と予測しました。

(原典)
https://www.theatlantic.com/health/archive/2020/02/covid-vaccine/607000/

それが第一の絶望的な予測です。リプシッツ教授は次のようにも述べています。

「予測は間違っているかもしれないし、私は間違っていることを強く望んでいるが、準備はしておいたほうがいい」(Predictions can bewrong and I very much hope this is, but better to be prepared.)(マーク・リプシッツ)

リプシッツ教授のこの 「準備」 でいくと、日本では 5千万人~ 9千万人が感染することになりますね。

それに対して、4月14日にリプシッツ教授グループの助教・スティーブン・キスラー (Stephen Kissler) が科学雑誌 「サイエンス」 に掲載したものが 「新型肺炎 COVID-19 は 2022年までに終息し、たとえ再燃しても 2024年までに終息する」 という第二のやや希望的な予測です。

(原典)
https://science.sciencemag.org/content/early/2020/04/14/science.abb5793

その理屈はこうです。

すなわち、この地上では、ウィルスはウィルスで、多くの種類のウィルスどうしが生き残り競争を繰り広げている。我われの普通の風邪の病原体として昔から存 在しているコロナウィルスの 「HCoV-OC43」 や 「HCoV-HKU1」 が、幸運にも、「新型肺炎 COVID-19のウィルス」の感染を効果的に抑制し、COVID-19は 2022年までに終息する。たとえ再燃しても 2024年までに終息する。

すると、「自粛」あるいは「緊急事態宣言」は 2022年まで、あるいは、遅くとも 2024年まででよいことになります。

リプシッツ教授のグループは、感染症学の分野で世界最先端のグループの一つですが、「ウィルスの世界にも生存競争がある」 という常識の上に、COVID-19のウィルスの天敵として普通の風邪のコロナウィルスをもってきたところにこのグループの強さと弱さがありそうです。

なお、私は若いころにアメリカ公衆衛生局国立衛生研究所(N.I.H.)に勤めたことがあります。ハーバードの人たちとも一緒に仕事をしたことがありますが、ハーバードには若くて尖がった天才がたくさんいます。スティーブン・キスラー博士もその一人のようです。

さて、「2022年まで、あるいは、遅くとも 2024年まで」 となるにしても事は深刻です。

日本が、現在の社会機能を一定期間犠牲にしながら単に 「やり過ごして」 その後復元することを前提とする戦術は、望むと望まないとにかかわらず、崩れ去るだろうと思われます。すなわち、「コロナ禍の後に世界は違うものになっているだろう」 と私も考えております。

ラリー・フィンク (ブラックロック CEO) は 「コロナ禍が終息すると経済はゆっくりと V字回復するが、JIT(Just In Time 必要なものを必要な時に必要な量だけ生産して在庫を持たない生産方式)、サプライチェーン (物資の供給連鎖)、航空旅客、働き方、買い物、旅行、集まり、家族のあり方など、多くのことが見直されていく」 と彼なりに述べているようですね。

日本では、社会機能が停止し、社会構造・経済構造は著しく変化し、あるいは壊滅する。そして、日本人を含めた世界の多くの人々の人生観・価値観も大きく変わるでしょうと思われます。

大相撲、プロ野球、サッカー、コンサート、映画館、パチンコ、レストラン等も、早期再開の見込みはなく、衰退するでしょう。観光業も衰退するでしょう。2021年の東京夏季五輪も 2022年の北京冬季五輪も開催できないでしょう。

ワクチンは世界で 100社近くがアドバルーンをあげていますが、使えるか使えないかの閾 (しきい) が高いので、これまでの経験から、よほど幸運でなければ、その中の 1社たりとも 2~4年で開発できるものでないでしょう。

アビガンは重症者には効かないことが分かっています。他の治療薬も効くというデータと効かないというデータが混在しています。

日本では、「赤字国債」」が「戦時のように」乱発されるでしょう。企業の多くが倒産し、空前の不況が日本を襲うでしょう。数年では回復しないでしょう。

そこへ首都直下地震 (インフラのみで約 800兆円 日本土木学会推計)、南海トラフ地震 (インフラのみで約 1,400兆円 日本土木学会推計)が高い確率で来るかもしれません。日本は世界の最貧国になるかもしれません。






(その3)

Subject: 新型肺炎 (COVID-19) からどのようにして社会機能を復興させ得るか


村田 様

入口紀男です。
お疲れさまです。
「新型肺炎 (COVID-19) からどのようにして社会機能を復興させ得るか」  につきまして、以下をご参考まで拝送いたします。


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以下は、アメリカが  「新型コロナ肺炎」  を収束させるための段階的条件とするものです(ハーバード大学倫理センター提言 4月20日)。

2020年5月より検査、追跡と支援隔離の 「TTSI」  (Testing, Tracing & Supported Isolation) を基軸として 5兆円から 30兆円の予算で段階的に進める。

2020年6月に、検査能力を  「1日 5百万件」  とする。感染者の追跡と隔離を徹底する。隔離は手厚く行う。医療従事者、コンビニ・スーパー、電気・ガス・水道、物流関係者などのライフラインを支える労 働力が疲弊しないよう、また、不足しないよう、特に手厚い支援を行う。万一感染した場合には、休みを取らせて給与を保証する。

2020年8月 検査能力を  「1日 2千万件」  とする。希望する人には頻繁に検査を受けさせる。検査を受けた上で、全社員を出社させる。子どもたちを学校に戻し、補習をして学習の遅れを取り戻させる。 徹底検査が行われているので、安心して働き、また、安心して学ぶことができる。スポーツ選手は毎日検査を受けて試合をテレビで提供する。飲食店や一部の観 戦試合は座席の間隔をあけて再開する。

(原典)
https://ethics.harvard.edu/covid-roadmap 

(ハーバード大学エドモンド J. サフラ倫理センター)

(動画)
https://www.youtube.com/watch?v=HhRQxk9QA-o&t=25s

なお、ハーバード大学は、新型コロナ肺炎が終息するまで 2年間を想定しており、これが米国内で感染の広がりを抑えつつ、経済を力強く再建して行く 「唯一」 の方法だとしています。

また、これだけの検査をしないで、「新型コロナ肺炎」が終息するまでの間に、自粛要請とその後の感染拡大を 「何回」 繰り返しても、前記予算 (5兆円から30兆円) の 「数倍」 を長期にわたって単に費やして行くだけあり、その結果、感染拡大が抑えられる保証は 「ない」 だけでなく、その場合は来冬 「今年より大きな山」 が来かねないとしています。

それは、期間限定の自粛を強力かつ一定期間加えた場合は、山は効果的に低くなるが、その期間が過ぎると、いずれ再び感染拡大が起きて、感染者総数としては変わらないとして知られているからです (オックスフォード大学)。

(原典)
https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(20)30567-5/fulltext

先進国の中で 「徹底検査と隔離」 を断行しない国は日本だけです。日本ではその代わりに  「自粛」  を断行していますが、それによって社会機能は停止し、あるいは、深刻に破壊されています。日本では、2022年/2024年までは 「自粛」 を終えると再び感染拡大が起こり、その度に 「自粛」  体制が必要となるでしょう。

日本では、「今年 8月に 1日 700万件 の検査体制なくして収束なし」 (ハーバード大学) といえそうです。





(その4)

Subject: 検査なくして安心も国力の増進もなし(日韓軍事力比較)


村田 様

入口紀男です。
お疲れさまです。
「検査なくして安心も国力の増進もなし(日韓軍事力比較)」  につきまして、以下をご参考まで拝送いたします。

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日本の軍事力は、数年前まではイギリス、フランス、ドイツ、韓国などに次いで世界 10位でした。現在は、日本 5位、韓国は 6位です (核戦力を除く)。

https://www.globalfirepower.com/countries-listing.asp

日本は、ここ数年、戦前のような世界屈指の軍事列強国となることを目指してきました。そのため予算上も法制上も軍事力の増強に努め、一方で、国公立病院の 統合、病床数削減等に努めてきました。高等教育等への交付金等も極限まで削減しました。日本は、さらに国公立大学から、軍事力とは無関係である文系学部を すべて廃止しようとする動きもあります。

次は日韓の軍事力比較です。

https://www.globalfirepower.com/countries-comparison-detail.asp?form=form&country1=japan&country2=south-korea&Submit=COMPARE

もっとも、軍事力比較とは申しましても、国内に商用原子炉を 1基でももつ限り、それを通常兵器で攻撃されるだけで、国土を失ってしまうのですから、根源的に正しい比較ではありませんが。

韓国では最初から熱があるだけで徹底的に検査を行った結果、感染者は野放しにされておらず、国民の生活は以前に戻っております。検査は徹底していますか ら、オンライン教育などは行われていますが、国民は安心して出勤し、安心して登校しております。やはり、「検査なくして安心なし」 だったようです。

軍事力でも、早晩韓国が日本を抜き去るでしょうと思われます。

今に思えば、日本は、ほんのちょっとしたこと (五輪開催のために感染者数を少なく見せようとして最初から検査数を絞ったこと) が、はからずも、社会機能、経済機能、国民生活の破壊から軍事力の凋落まで、すべてにわたって  「命取り」  となったのではないかと私は考えております。




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