細川護煕元首相、後藤新平賞受賞の挨拶(抜粋)
「後藤新平賞」受賞にあたって (2012年7月15日)
(前略)
私はテレビも新聞もほとんど見ませんが、ただこのところ大変気にしていることがひとつある。それは福島原発4号機の問題です。先の原発の事故で我々は世
界中に大きな迷惑をかけた。しかし、このところアメリカの議会をはじめ内外の専門家が警告を発しはじめたように、4号機の原子炉建屋が再び大きな地震や津
波に襲われた場合、地上30mにある使用済燃料プールが崩壊し、チェルノブイリをはるかに超えるセシウムが放出される可能性があるといわれていることで
す。日本のメディアでも遅まきながらようやく報じられてきておりますが、この問題は北朝鮮のミサイルどころではない。実はアメリカNRC(原子力規制委員
会)のヤツコ委員長は、事故直後貯蔵プールの水がなくなって大量の放射能が放出されるとの強い懸念から、80km以遠への避難勧告をオバマ大統領に行いま
した。しかし意外なことにプールにはまだ水が残っていて放射能大流出という大惨事には至らなかった。あとでわかったことですが、4号機では当時大型構造物
の取り替え工事が行なわれていて、普段水のないところまで水を張って工事をしていた。しかもその工事が不手際で工期が遅れていた。その神風といってもいい
偶然が幸いしなかったならば、この日本という国は放射能の灰に埋って終っていたかもしれないと考えると、全く慄然としたものを覚えます。
すでに震災で壁や上部が吹きとんでいる4号機が事故を起したら、1500本以上の燃料棒が一体どんなことになるか。一刻も早く強力な対策を講じなければな
らない。もしそういうことになったらその時は、東京も関西ももちろんアウトでしょう。アジアも致命的な打撃を受けることは間違いない。東電などは地震で倒
れることはないといってるけれども、東電などのいうことはとても今更信じられない。私は野田総理が就任された時から「原発に依存しない社会をつくる」とい
う大方針を、「いつまでに」と時間を明示してあなたは指し示されるべきだといい続けてきました。特に5月のはじめにワシントンであった日米首脳会談の前
に、私はこの超重大問題である4号機のことをオバマ大統領と真先に話し合って協力を要請すべきだと野田さんに進言いたしました。帰ってきてからどうだった
かと尋ねましたら、福島問題全般について話してきたという返事で、あの感じでは肝心なことは話していないなと思いましたが、ちょっと危機感がなさすぎる。
大飯原発の再稼動もそうですが、原発の問題だけはどうも私とだいぶ認識が違っているようです。
(後略)
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