緊急出版のご案内

東京五輪がもたらす危険――いまそこにある放射能と健康被害
東京五輪の危険を訴える市民の会[編著]渡辺悦司[編集]
緑風出版刊 A5判並製/216頁/1800円


 
詳細は:http://www.ryokufu.com/isbn978-4-8461-1914-0n.html



渡辺悦司 2019年8月25日

 もうおよそ11ヵ月後には、東京オリンピック・パラリンピックが開催されようとしている。本書は、オリンピックによってもたらされようとしている放射線被曝の恐るべき危険を広く日本と世界の人々に警告するための緊急出版である。
 すなわち [1]東京オリンピックに参加することを計画しているアスリートと観客・観光客に、福島や東京が全く「安全である」「被曝リスクはない」「被 曝しても健康影響はない」という日本政府の宣伝を決して信じないように強く勧告し、[2]短期間であっても福島や東京圏に滞在することがもつ被曝の危険性 とリスクを正しく認識して、オリンピック・パラリンピックへの参加を再考するように呼びかけ、[3]オリンピックの大宣伝と大建設ブームの対極として進め られている、日本政府による避難者や被災者への援助切り捨て、政府基準で年間20mSv(実際には33mSv/y)という高汚染地域への住民帰還、それに よる「棄民」と確率的「大量殺人」――この戦争犯罪にも匹敵する「人道に対する罪」――について知るように促し、[4]現実に現れ・広がり・深刻化してい る福島・東京および日本全体における、被曝影響と考えるほかない健康被害を想起するように訴え、[5]日本政府に対して東京オリンピック・パラリンピック 開催を返上するように要求し、各国政府・スポーツ団体に対して選手の被曝リスクを真剣に考慮して東京オリンピックに選手団を送らないように勧めるものであ る。主要な内容は、放射線科学・医学および具体的被曝状況という客観的側面からの批判と、道義・人道・人権上の正義に反する側面からの批判とに大きく2つ に分かれている。 

第1部 東京五輪の危険を警告する科学者・医師・市民

 ここでは、すでに東京でのオリンピックの危険を警告し開催に反対して発言してきたさまざまな科学者・医師・市民の活動を紹介する。
 先駆的な意義をもつ雁屋哲氏(「美味しんぼ」の作者)のIOCへの2013年10月3日付公開書簡の全文を石津望・渡辺悦司が翻訳して掲載する。核戦争 防止国際医師会議IPPNWドイツ支部の声明(梶川ゆう訳)、ドイツにおける反被曝・反東京五輪の運動(桂木忍・川崎陽子論考)、米カリフォルニア州にお ける東京オリンピック反対運動(石津望論考)を紹介する。小出裕章氏(元京都大学原子炉研究所)のオリンピックの危険性を指摘した声明(抄録)を、ノー マ・フィールド(シカゴ大学名誉教授)の序文を付けて掲載する。アーニー・ガンダーセン氏の「放射能被害への塗り薬」と題する論考を渡辺悦司が紹介する。 東京オリンピック・パラリンピック反対と返上の活動を積極的に行われている村田光平元スイス大使のインタビュー記事を引用する。脱被ばくネットとチェルノ ブイリ法日本版の制定の運動が始めた東京オリンピックでの被曝反対の運動について岡田俊子・山田知惠子・柳原敏夫(弁護士)論考が、福島事故原発からのト リチウム汚染水の放出反対の運動については、山田耕作論考が扱う。落合栄一郎(米ジュニアータ大学名誉教授、カナダ在住)論考は、自らの経験を踏まえて放 射線の「見えない脅威」をあらためて強調している。矢ヶ崎克馬(琉球大学名誉教授)論考は、7年間で28万人の過剰死という健康被害の実情を示し、「一切 健康被害は無い」という日本政府のキャンペーンが安倍ファシズムの象徴であり「知られざる核戦争」の一環であることを明らかにする。

第2部 東京五輪での被曝が危険なこれだけの根拠

 ここでは、東京オリンピック・パラリンピックがはらむ、世界から参加するアスリートと観客・観光客への被曝のリスクについて、福島原発事故の規模とその 深刻性を客観的科学的に分析し、訪れる世界のアスリートと観光客の諸個人にとって、たとえ短期滞在であってもその後の生涯にわたる被曝リスクが「ある」こ とを明らかにする。
 福島原発事故による放射能放出量に再び立ちかえる必要があること、福島事故が放出した不溶性放射性微粒子が特別の危険性をもつことを、渡辺悦司論考で指 摘する。放射線感受性の個人差が大きいことについて本行忠志(大阪大学医学部教授)論考が論じている。トリチウムが特別の危険性をもつことについて渡辺悦 司・山田耕作(京都大学名誉教授)論考が扱っている。福島原発事故の健康被害「ゼロ」論の論理とその「自滅的な」帰結――可能なかぎり多くの・可能なかぎ り著名な人々を可能なかぎり大きい被曝のリスクに曝す――について渡辺悦司論考が取り扱う。政府が被害全否定論の論拠としているUNSCEARの虚偽を藤 岡毅(大阪経済法科大学客員教授)論考が明らかにしている。微粒子に加えて、生物濃縮によると考えられる「黒い物質」「黒い物体」と汚染の循環について大 山弘一(南相馬市会議員)論考が論じている。ゼオライト・活性炭フィルターを装着した場合に容易に観測される東京圏の水道水の明確な放射能汚染と最近の悪 化について鈴木優彰論考が明らかにしている(下澤陽子氏による補足がある)。食品汚染の現状と福島産食品を集中的に選手たち供給することの危険性と道義的 責任について大和田幸嗣(元京都薬科大学教授)論考で扱われている。

第3部 現実に出ている被曝影響、福島・関東圏からの避難者の健康影響

 ここでは、福島原発事故による被曝影響や放射能被害と考えるほかない日本における健康状況と、現実に福島事故からの避難者、福島からだけでなく関東や東京圏からの避難者が実際に体験した健康影響についての手記を掲載する。
避難者に現れている健康影響について臨床医として診療に当たっている三田茂論考がその全体像を概括する。現実に出ている被害について、がん、とくに白血 病・血液がん、教育統計に現実に現れている子供の精神発達への影響を渡辺悦司論考で取り扱う。尿検査(放射性セシウム)に見る福島・関東の汚染について は、調査を行った斉藤さちこ氏の論考を渡辺悦司が紹介する。東京・福島からの避難者の人々が実際に体験した被曝影響と考えるほかない諸症状について、福島 敦子氏(福島から避難)、羽石敦氏(茨城から避難)、下澤陽子氏(東京から避難)、園良太氏(東京から避難)による手記と、鈴木絹江氏(障がい者の立場か ら、福島から避難)のインタビューを掲載する。




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