福島が世界の究極の破局に発展するのを防ぐために(邦訳・要旨) 平成26年8月23日
村田光平
序言福島は世界の安全保障問題である。事故現場は制御されておらず危険な情勢の悪化が見られる。日本政府と東電は内外で信用を失っている。事故後3年半以上 を経ても日本は如何に対応すべきか途方に暮れて responseresponseresponseおり、この国家の危機がなんと東電の経営危機として扱われている。現在の事故処理の体制には重大な欠陥 があ り、強力な国際協力によりこれを抜本的に改革することが緊急課題となっている。もはや時間は残されていない。 世界の安全保障問題 福島は原発の存在そのものが安全保障問題であることを示した。何故ならば、使用済み燃料を収めたプールの冷却システムが3日以上故障すればメルトダウン が起こりうるからである。このことは世界に存在する440基以上の原発について言えることである。福島が世界の安全保障問題であることは疑う余地がない。 現に、世界の究極の破局に通じ得る4号機の崩落をもたらす巨大地震が発生しないよう祈ることしかできないのである。 政府と東電が主導する現体制の致命的欠陥を認識すれば、日本の将来が如何に危殆(きたい)にさらされているかに驚くであろう。 原子力基本法は国民の安全を確保する責任の所在を明確に規定していない。 事故後、原子力規制委員会が関係省庁からの独立させるために設置されたが、その事務局職員の「ノー・リターンルール」は最近無視されている。 同委員会の委員がこれまで電力会社とつながりのない者から選定することも守られなくなっている。 同委員会は公然と住民の安全委責任を持たないとの立場を明らかにしている。 再び過酷事故が起こらないという保証はあり得ない。次に起こる事故は遥かに破壊的なものとなりうる。福島事故の際、風向きのお蔭で8割の放射性物質は海に放出されたが、風向きが逆であったなら東京は避難を余儀なくされたであろうことを忘れてはならない。 汚染水問題 汚染水問題は全く解決の目途が立っていない。事態は悪化している。トリチウム以外の放射能核種を除去しうる水処理施設は何度も作業の中断を余儀なくされ、問題を抱えている。 汚染されていない地下水を直接海に流すためのバイパスが最近完成したが、流出水量の減少に貢献していないことが判明した。山側からの地下水の海への流入量は余りにも膨大であり、このようにして地下水は大量に汚染されている。 トレンチの水を凍らせる試みも成功していない。凍土壁の見通しは暗い。 信頼できる専門家は毎日海に流出される汚染水は1000トン、内600トンは地下水とみている。これに加え、頻繁に派生する豪雨が現場に多量蓄積した 放射性物質を海に洗い流している。最近の日本の気候の変化を反映した土砂崩れを齎す局地豪雨の頻発がこれに拍車を加えている。 1年前、東電が3号機のがれきを撤去した際、放射性物質が風により四方八方に飛散した。東電はその放射線量を4億ベクレルと発表したが、実際はその10倍あったとみる向きもある。 事故処理が重要な局面を迎える中で東電は職員の低いモラルに悩まされている。 事故後3000名が退職している。深刻な作業員及び資金確保の問題は東京オリンピックにより深刻な影響を受けることとなろう。 太平洋を越える福島の影響 2014年1月、カリフォルニアの住民から発信された記事が注目された。 同記事は「ロシア国防省報告」なるものに言及しているが、次の抜粋が注目される。 [福島から放出された放射線量は全世界の核実験が放出した10倍に及ぶと専門家は見ており、テキサス、コロラド及びミズーリ各州の雪から危険なレヴェルの 放射線量が検出されたとの最近の報道は、米国がこの歴史的な制御困難に見える核惨事の最も厳しい影響に直面するであろうことを警告している。] ここに述べられていることは真剣な検証を必要としている。これに関連し、米国西岸地域に及びつつある福島の影響につき米国の専門家による調査が行われており、今秋中にも「NATURE誌」がその結果を掲載するといわれている。大きなインパクトを与えるものと思われる。 日本は人類が経験したことのない事故がもたらした事態への対応に苦しんでいるが、国際的な支援を深刻に必要としていることは明白である。 新しい国際システム 福島は原発の過酷事故により国家の危機に直面せしめられた政府の限界を浮き彫りにした。また、一国では事故処理をなしえないことも示された。 一般に、政府の存続の寿命は数年であるが、原発事故は半永久的な対応を必要とするものである。メディアの協力を得て事故への対応に全力投球する責務から目をそらして、これを先送りするようなことはあってはならない。 原発の過酷事故については一定の責務を果たすことを義務とする新しい国際システムを設立することを国際社会に提案したい。少なくとも次の2点が求められる。 1.事故対応に最優先で当たり、最大限の努力をする。 2.人類の英知を最大限動員するための国際協力を具体化する。 結語 福島が世界の究極の破局に発展するのを防ぐことは国際社会の責務である。 現在の事故処理の体制には重大な欠陥があり、これを抜本的に改革することが緊急課題である。日本は国際連帯と強力な国際協力を必要としている。 |